35話
朝食を済ませると、俺は軽く外に出て汗を流した。エメルさんも一緒にどうかと誘ってみたが、「昨日足を捻ったのでパス」と言われたので1人きりであった。少しでも安静にすることはいいことだが、かなり軽度なものだったし、今日も街周りするつもりだろう?それが出来て軽い運動が出来ないとかどうなのよ。そんなことをぶつぶつ呟きながら、30分を過ごした。
地下に戻ると何やらエメルさんが右手にペンを執り、姿勢の悪い格好で紙に何かを綴っていた。
俺はそれがどこか気になり、不思議と口を開いていた。
「何を書いてるんです?」
「あ、ジーマ。これはそのー…。明日はクリスマスだろ!?だからサンタ……っと言うより父に、食料と生活に必要な物品をお願いしてるんだ」
エメルさんは「恥ずかしいものでも見られた!」てな感じで顔を赤らめながら言った。
──エメルさん…!
ここを出て行くときにちゃんと、兵士になるつもりはないかどうか聞いてみよう。
多くの人間を救っているとはいえ、アラサーの無職じゃ顔は立たんし異性の出会いもない。それに未だ父親に頼ってるって…。いかんことばかりじゃないか。
いくら大富豪とはいえ、ブルベも気の毒だな。彼のスネは娘にかじりまくられ出血している。
「………」
俺は数多の感情から、しばらく彼女から視線をそらさずにいた。
エメルさんは机にペンを置くと姿勢を伸ばして手紙を掲げた。
「よし、書けた」
やりきった!という感じの表情だ。何が彼女をそういう気持ちにさせているのか…。
彼女は奥の部屋から手頃な大きさのエンベロープを持ってくるとその手紙を俺に見せないようにいれ、俺に渡してきた。
「これ、ちょっと父の所に届けてくれないか?」
「え!?なんだって俺が!」
「いいだろ〜?私にはまだやるべきことが残ってるんだ」
「それはそれは。で、わざわざ自分の仕事を俺に押しつけてまでやるべき仕事とは?」
「え?そ、それは〜…」
彼女は身体を驚いたかのように跳ねさせると俺から視線を逸らした。すかさず追い討ちをかける。
「それは〜?」
「せ、洗濯」
「やっぱり暇じゃない!」
俺は彼女に封筒を無理矢理渡押しつけ、その場を去ろうとした。
「た、頼むよ〜!洗濯があるのは本当だし、昼まではお前も暇だろう!?」
エメルさんは俺の腕を掴み、瞳をウルつかせて見上げるように再度頼んできた。
しかし、今度は神にでも祈るかのようだ。
「それはそうですが…」
ここで俺は何か引っかかった。彼女の頼み方、単にめんどくさいからって感じじゃない。何が何でもって感じだ。
何か理由があるのか?
──まさか。
「エメルさん、もしかして」
「え?」
「もしかして自分から手紙を出しに行くのが恥ずかしいんですか?」
「ば、バカ!そういうんじゃ…」
「わかります。俺もここに来るとき友人に手紙を渡したんですけど、俺の前で読まれると恥ずかしいんで、家に帰ってから読めって言いましたもん」
俺は手紙を半ば奪い取るようなかたちで受け取り、ブルベ宅へ向かうための準備を始めた。
「昼までには帰ります。エメルさんは、それまでゆっくりしといてください」
俺はニコッと彼女に向かって笑ってみせた。
「だ、だから…」
「ほいじゃあ、また後で〜」
彼女はまだ何か言いたげな様子であったが、時間を経たせて変に気を使わせてしまうといけない。俺は彼女の言葉を遮るようにそういった。
外へ出るとまた刺さるような寒さが俺を襲ったが、俺の意識はどこか変なところへ飛んでそれをほとんど感じさせなかった。
──エメルさん、意外と可愛いところもあるのだな。まあどのような要件でも身近な人に手紙を出すという行為には若干の羞恥心が付き物だ。だが、その定義があるにしても彼女が顔を赤く染める理由が可愛らしいのには驚いた。
「フハハ…」
彼女、一緒にいればいるほど楽しい女性…。いい男がつくなこりゃ。
俺は何故か上がった気分の調子で、鼻歌を歌いながらブルベ宅へ向かった。
「行っちまった…」
私はジーマの居なくなった部屋でポツリと呟いた。
「彼ってセッカチですかねぇ?」
イリーナがコーヒーを目の前の机に置きながら言った。
「だろうな。とはいえ状況によって人は誰でもセッカチになる。何が彼をそうさせたのかは知らんが」
「そうですよね。エメルさんも結婚にセッカチですもん」
「なんか言ったか?」
「いいえ、別に」
イリーナはオホホと口元を手で押さえながら楽しそうに笑った。彼女も中々言うようになったものだ。
私はすぐ隣にある椅子を引くと背もたれをトントンと叩き不機嫌そうに、座れと合図した。
彼女はそんな私の心情には目もくれない様子で椅子に座った。
「ジーマ君、何か勘違いしていましたけど、ほんとはどういうつもりで彼にお願いしたんです?」
話題を思い出したかのようにイリーナは言った。
「別に100%勘違いって訳でもないさ。けどね、それは本当に少しの割合でしかない」
私はその先を続ける前にコーヒーを一口啜った。
安心するような温かさが身体を包み込み、自然にふぅーっと溜め息が出てしまう。
「……本当は、ちょっと父に会いづらいんだ」
「え?それってどういう…」
「いや、別に嫌いって訳じゃない。周りに大勢いれば、父と会うのだって平気さ。けど一対一となると」
「と?」
「ここにいるみんな、大勢の人間を守ってるはずなのに何故か私は自分自身が惨めに思えてくるんだ。父にいつも頼りっぱなしで、とても悲しくなる」
私は俯き、コーヒーに映る自分の顔と睨めっこしながら、暗い声で言った。
「エメルさん…」
「私って奴は本当に…」
「そ、そんなことないです!」
イリーナが椅子から立ち上がり、興奮した様子で言う。
「え?」
「確かにエメルさんは、過剰に人を頼るところがあるし、大酒飲みで異性にモテる部分が容姿だけの人です!」
「そんなことないんだよね!?」
「だけど、あなたが守ってくれるおかげで私達は生きていられる。富も力もない私達に手を差し伸べてくれる!エメルさんのお父様がいくら弱者に対して非情な人だったって、きっとエメルさんのことを分かってくれる筈です」
「……イリーナ」
──お前はそんな事を思ってくれていたのか…!
もしかしたら、私は自分のことを卑下しすぎたのかもしれない。
私はイリーナの言葉に心が軽くなった。
「そ、そうか……、そうだよな。ありがとう。おかげで気分が大分楽になったよ」
「そうですか。それは良かったです。ならば、今でもまだ間に合うんじゃないです?」
彼女は突然意地悪な顔つきをして言った。
「ん?何が?」
「ジーマ君に、手紙を出すの任せたでしょ?余計な枷が多少でも外れたら、自分で届けに行くのが筋じゃないですか?」
「えぇ!?」
「面倒くさかったんでしょ?あーだこーだ言っても」
「………」
…バレたか。
俺はなんとなく気まずい気持ちになりながらも、ブルベ宅へ向かった。
「流石に…なぁ?」
ブルベ宅周辺を高台から観察するとやはり、多くの警備が周辺を囲っていた。
──命を奪われそうになったものな。俺にだが…。
正面から恭しく行くかね?まあ当然そうすべきだが、通してくれるか…?強い警戒態勢には対象の周囲をうろつく者は、不審者とそう変わらんように映るからな。
それならどうすれば…。
って…おいおい。馬鹿か俺は。
手紙を渡しに来たのだ。ならば警備に渡せばいいじゃないか!
いやぁなんだ?どうも今日は頭が回らない。
まあいい。とりあえず手紙を渡しに行こう。
昼までには帰るとエメルさんに言ったからな。
「抑えろ!」
「ちょっと…!違うんです!怪しい者じゃない!ブルベさん宛に手紙を渡しに来ただけなんです!」
「それがダメだというのだ、それが!」
俺の右腕を抑えている男が必死な形相をして半ば叫ぶかたちで言った。
み、見くびっていた!どうやら家に近づくだけでもいかんかったらしい!
手紙を警備に渡そうすると、俺はすぐ周囲を囲まれ四方八方から四肢を抑えられそのまま地面に押し倒された。
「俺は手紙をブルベさんに渡したいだけです!それ以上のことは何もしない!ここまで言っても分からんかね!?」
俺は押さえられている右腕を必死に振りほどくと身体を押さえている警備員1人1人の目前に、エメルさんのサインの入った手紙を突きつけた。
「エメル……?貴様!?」
「そう、そのエメルさんに頼まれたんっすよ」
「貸せ!」
1人の男が強引に手から手紙を奪い取った。
「あ!」
「確かめてやる」
「待って!」
俺は手紙に向かって手を伸ばした。すると今にも手紙を読もうとしている警備員が手を止めて視線だけ俺の方に向けた。
「なんだよ?」
「その……、アンタが読んじゃダメだ!」
「……何故?」
「え?えぇっと……恥ずかしい、から?」
「グヌゥ!!やっぱり危険だな!!」
「だからホントに違うってぇぇえ!!!」
俺の四肢を押さえる力がより一層強くなったが、俺はそれでも構わず芋虫のように身体を捻ったり上下に揺らしたりして必死に振りほどこうとした。
「チィッ!暴れん坊な奴ッ!貴様は地下牢行きだ!」
「クッソ!放せよ!なんで俺がこんな目に…」
俺の口からポロリと悲しげな声が漏れたが、警備員は構わず縄を取り出しそのまま俺の手足を縛った。
「お前は足首の方を持て。2人で牢屋まで運ぶぞ」
リーダーらしき男が俺の1番近くにいた男にそう命じると、彼はそれに従った。
「扉を開けろ!それと、もう1人くらいは指示せずとも来い!」
リーダーの男は中々キツい男らしく、中へ入っても構わず警備員達を怒鳴り散らした。
「…何事か!」
男の声に苛立ったのか、それとも驚いたのか。どこからか事をたずねる聞き覚えのある声が聞こえた。
「ご、ご主人様!」
ご主人……?
俺は男の向いている方に目を向けると、奥の廊下からブルベが出てきた。
「ぶ、ブルベ!」
「貴様は…!?」
ブルベは驚いたような顔をすると、直ぐにこちらへ駆け寄ってきた。
「何用だ貴様!」
「え、エメ……。あなたの娘さんからお手紙を預かっておりまして、それを届けに…」
「出せ」
俺はブルベに「警備員の手に握られている」と伝えるために目を、ブルベの目と警備員の男の右手を往復させてアイコンタクトをとった。彼はそれに気づくと男の右手から手紙を抜き取った。
「…確かにエメルの字とそのサインだ」
「ッ!?いけません、ご主人様!此奴はあなたの命を狙っています!手紙に何か細工をしているかもしれません」
「ハァー…。この薄い手紙に、どうやって細工をするというのだ。もう少し考えてからものを言え」
ブルベはそう言うと、エンベロープを構わず破り、便箋を取り出した。
「あーー!」
男が酷く恐怖した顔で悲鳴をあげる。
しかし、ブルベに何も異常はなさそうだった。彼は額にしわを寄せながら、文面を舐めるように必死に見つめている。
それから少しばかりして、ブルベは手紙から目をはなした。
「この者の縄を解いてさっさと持ち場へ戻れ」
彼はきっぱりとした口調でそう言うと、俺の手足の縄を解いてぞろぞろと警備員達は持ち場へ戻っていった。
「…まさか、あなたに助けられるとは思ってもいませんでした」
俺は立ち上がりながら伸びをして、そのあと不思議そうに言った。
「何故、お前が…」
「エメルさんには、少し前からお世話になってるんです。それでこの手紙を届けに」
「困った奴だよな…?全く」
そうは言ってもブルベは、エメルさんの話になるととても嬉しそうな表情をしだした。
──親バカなのだな。
「エメルは、昔からああいうんだよ」
「へぇ〜」
──10分後
「それでエメルの奴…」
「……」
さっきからエメルさんの話しかしていないじゃないか!いったいいつ終わるというんだ!
しょうがねぇ。このまま時間が過ぎていくよりは無理やり話を突っ込むようだが、話題を変えるほかない。
「ブルベさん」
「ん?おお…」
ブルベ…。急に話を変えて悪いが貴様の下で働く者のためだ。悪いが聞かせてもらおうじゃないか。
「そう言えば、先日。あなたハンターに狙われたそうですね?」
「!?」
俺が突然その話を切り出すと、ブルベは目をこれでもかというくらい開けて仰天した。
「今、ハンターって…!何故貴様が!」
「僕だって兵士です。それぐらいの情報は入ってきます。なんでも、依頼人はあなたの…」
「……!」
「大切にしてあげてますか?あの娘のこと」
「……ハンターにまた命を狙われても堪らんからな。少しばかり他の奴らにも楽をさせてはいるよ」
「へぇ……。そいつは」
俺は満足そうにうなづくとペンタスの顔を思い浮かべた。良かったじゃないか、全く。
「なあ、あんた」
「はい?」
ブルベからの突然の呼びかけに俺は妙に高い声で応答してしまった。
「その…えと」
「はい?」
「あ、あの夜から、ハンターに間違いは気付かされたさ。けど、私は…」
「……」
「私はいつどこで道を踏み間違えたのだろう?」
ブルベが深刻そうな顔で俺にたずねてきた。
「……冷たい言い方をしますが、僕に聞いて頂かないで貰いたい。僕はあなたを知ってそう経ってないし、あなたがどういう人間かを完全に把握しきった訳ではない」
「そうか…」
「だけど、未来のために過去があるという考え方でアドバイスするなら。これまで以上に間違いを正して、従業員に楽させて。それで過去など忘れて開き直ればいいんじゃないです?そうしたらいずれ、彼らもあなたのしてきたことを忘れてくれる。きっとね?」
「…難しい言い方をする」
ブルベが不満そうに唸った。
「こういうのは慣れてなくてですね…。なんなら他の人にでも聞いて回ったらどうです?」
「いやいい。めんどくさいからな」
ブルベはプイっと俺から視線を逸らして言った。
俺はそのリアクションに「敵わんな」と言った表情で後頭部をポリポリ掻いた。
「……だけど、ありがとな。参考にさせて貰うよ」
ブルベは相変わらず視線を逸らしたままだったが、俺に礼を言ってきた。
その恥ずかしげではありつつも素直なところに、俺はエメルさんの面影を照らし合せていた。
「これ」
「へ?」
ブルベは紙切れのようなものを俺に差しだしてきた。
「はした金だが…昼飯くらいは食えよう?」
ブルベは小さく呟くように言った。
札を広げてみると、常に財布に入ってそうな額の金額であることが確認できた。
「ほんとに、はした金ですね」
「いやならいいんだぜ?」
「フフ…。冗談です。では。1年に1度の娘の願い、聞いてあげてくださいね」
「分かったから早く出て行け」
「はいはい」
俺は返事をすると、爪先を玄関から外へ出した。
──あ、そうだ。
「お酒、たくさん持ってきてくださいね?彼女、お酒が主食だから…」
「…今の冗談は、中々面白かったぞ?」
ブルベはにこりと笑うと、俺から背を向けてスタスタと奥へ歩き出した。
俺はそれを確認すると、豪邸を後にした。
門前でピシリと背筋を伸ばす警備員のリーダーの男の顔を意地悪そうに見つめながら。
俺はそのあと街へ行き、今日食べるための肉をブルベから貰った金で買った。今夜はクリスマスイブだからな。
ご馳走と言えるほど高い物でもないが、少しだけなら皆でも食える。…俺は抜きにしてな。
「肉は買った…。パンならあるし。明日は食料が沢山来るからもう充分だよな?」
俺は抱えている紙袋の中身を覗くようにして呟いた。
──ボーンボーン
近くから、12時を報せる鐘が鳴った。
もう昼時か…。
ん?昼?
なんか忘れてるような……、約束?物だったか?
忘れ物。忘れ物。
──…………。
「しまった!」
エメルさんに昼には帰ると伝えているんだった!急いで帰らないと!
は、は、は、ハンターならまだ大丈夫か!?
な、鉈を!
俺は荷物をその場に置き、身体中を舐めるように手で探った。
がしかし、持ってきているのは財布と手紙だけという、ほほ手ぶらの状態だったので当然鉈があるはずが無く、俺は走って帰ることしかできなかった。
俺は血の気を引かせて顔を真っ青に染めたあと、全力疾走で街を駆け抜けた。
──グゥゥゥウ…。
「遅いな…」
私は腹を鳴らしながらテーブルに頬杖をついてジーマの帰りを待っている。
「昼飯を準備したってのに、あいつは…」
「もう先に頂いちゃいます?」
イリーナが提案する形で言った。
「いや待つ。でも、イリーナ達は先に食べてていいぞ」
私は少し不機嫌な気持ちを抑えながら、イリーナに向かって言った。
「……。いや、私も待ちます。彼は約束を忘れるような人ではありませんから」
「…そうだな」
「ハァ…ハァ…」
貧民街には着いたが、すでにかなりの距離を走ったことで俺の息は随分とあがっていた。
だが、セナル教がいなかっただけまだマシかな?あいつらを相手してちゃ体力ももたんし、なにより時間がね…?
──イリーナ、エメルさん。
もしそうやって信じてくれているのならありがたいが、俺が約束を忘れるような男ではないと思っているなら違うぜ?
俺はこの国で1、2を争うほどのおっちょこちょいだ。
落ちこぼれ兵士卒業とか、ウォーリー奪還作戦後には馬鹿なこと考えていたが、よくよく考えなおしてみれば人探しが苦手でおっちょこちょいとか落ちこぼれそのものではないか!
「俺って奴は…」
俺は自分自身に落胆し、思わず息の上がった声をもらした。
ハァ…!ハァ…!
あと少し!この角曲がれば!
俺は手前の角を右に勢いよく曲がり、その影響で足を滑らせながらもそれを踏み堪えそのまま態勢を立て直してまっすぐに隠れ家目指して走った。
「ハァ…。ハァ…」
俺は隠れ家の入り口前に到着すると、手を膝について呼吸を整えるよう努力した。
「ハァ…。着いたぜぇ」
俺はまだ息が荒れたままの状態でそう言うと、ニヤリと笑ってドアノブに手をかけた。
しかし──
「──!?」
背後か!?
俺はすぐに手をドアノブから離し、勢いよく振り向いた。
「ハァ…。ハァ…?」
い、今、人の気配がした!それも普通とは少し違うオーラを纏った!
俺のこめかみから冷たい汗が一筋流れた。
今まで走ってかいていた熱い汗とははっきり違う。何か危険を察知したり、あるいは遭遇したりしたときにかく凍ったかのように冷たい汗!
こいつは!
「ハァ…!」
………。
「ハァ…?」
………。
「気のせい、か?」
俺は首を傾げながらそう呟いた。
確かに気配とは少し違ったかもしれない。全力で走ったことによるところのものかも…。
「って、ないよな…」
ハハハッと苦笑すると、もう一度ドアノブに手をかけて回した。
「待たせてしまったな、エメルさんを」
俺は少し気持ちを沈ませながらもドアを押した。
彼女、怒らなければいいが……。
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