第4話 バレンタイン大喧嘩

私達の前には軽食が用意された

少しお腹が空いてきたから

私達はサンドウィッチを手に取った



景ちゃんは結局

願書提出ギリギリで看護学校への受験をした



もともと頭の良い子だったから

それでもちゃんと合格した



しかし

けっこう違う進路も考えたようで

就職をするために様々な資料を集めたりもしていた



アパレルや事務職

飲食店など特に今までそうしたいと言ったことは聞いたことの無いような職種ばかりだった



「景ちゃん看護師さんになって結構経つね

仕事はなれた?」礼



「そうね

初めは必死な所もあったけど

最近は余裕をもって仕事をしてる

もう新人ではないから

いつまでもオタオタできないしね」景ちゃん



「景ちゃんは

進路決めるとき悩んだあげく看護師さんになることにしたんだよね」礼



「悩んでたよね・・・あの頃

なんだかそれについて声をかけてはいけない空気出してたよね」結衣ちゃん



景ちゃんはにっこり笑って



「色々ともめてたからね」景ちゃん



そう言うとオリーブをパクリと口に入れた



「私、内田先生と付き合ってたでしょ?

高校二年のバレンタインの時にはじめて大喧嘩したの・・・



原因は彼がモテモテで私が過剰に心配していたことと

私との約束をすっぽかしたから



後から聞いたらサッカー部の子の事で色々と忙しかったらしくって

仕方がないことだったんだけど

私はピリピリしてたから



私も門限があったから約束の時間に会えなくて

二月十四日はチョコレートを渡せなかったの



悔しかった



だって彼の事を大好きだって大きな声で言っていつでも取り巻いている子達は

ちゃんとその日にチョコを渡してるのに

大好きなことを隠さなくっちゃいけない私は渡せなくて・・・



彼がモテてた事はその時始まったことではないけど

きっと私の中で蓄積されてたものが爆発したのね



翌日も翌々日も

何度も連絡してくれてたけど無視してて

学校で会っても目をそらして

部活でも二人にならないように孝太(景ちゃんの幼馴染でサッカー部キャプテン)とずっと一緒に居たの

みるみる先生も不機嫌になっていって

五日目にはとうとう連絡をくれなくなった



自分からはじめた無視だったのに

もう嫌われてしまったんだろう

って傷ついちゃったりして



一週間経って期末テストそ最終日

彼から電話があった

急いで出た



彼は良く分からないことで終わるのは嫌だから

会って話そう

って言ってくれて

先生が仕事を終える18時ごろ会うことになった



彼の部屋に行って

自分の思いを全部話した



学校では先生に全く興味がない振りをしていること

友達にもいえない事

普通の恋人みたいにデートしたりできないこと

先生のまわりに居る子達にいつも嫉妬してしまうこと



彼は長々とろくにまとまりのない話しをずっと聞いてくれて

最後に言ったの



「俺だって沢山我慢してるよ



俺は大人だから

社会人だから

思いのままに感情のままにっていうのはいけないことだって

いつもブレーキをかけてる



お前のことが好きだから

大切にしたいって思ってる



デートしたくないわけないだろ

俺だって嫉妬する時もある

お前がサッカー部のみんなに慕われたら嬉しいけど嫉妬してる

孝太にだって嫉妬してる

俺の知らないお前を知ってるから



抱きしめたい

キスしたい

それ以上のことだって・・・」内田先生



その言葉に私は赤面した



彼と付き合いだして

キスをするまでにはそれほど時間はかからなかったけど

チュッ程度が主で

大人なキスをするのは滅多になくて

そうした時にも直ぐにやめて彼は私をギュッって抱きしめて

いつも深く深呼吸してた



会うのはいつでも彼の部屋だったけど

キス以上のことはなかったから・・・というか

考えても居なかった

キスだけでも十分に大人なことをしているって思っていたから



「我慢してるのはお前だけじゃない!」内田先生



そう言われてなんだか求められている気がして

急に恥ずかしくなって

耳が熱かった



私は先生に愛されているってその言葉で十分に感じて

自分がしようもない事で駄々をこねていた事を恥ずかしく思った」景ちゃん



私と結衣ちゃんはあの頃の誰も知らなかった景ちゃんと先生の関係を

ドキドキしながら聞いていた

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