第3話 進路

ざわざわとしていた会場は司会者の声に注目した



「皆さん

今日は集まってくれてありがとう

特にイベントのような事は考えていません

久しぶりに会う人も多く居ると思います

どうぞ自由に動き会話を楽しんでください

この2時間が皆様方にとって

僕にとって有意義なものになりますように」司会者



司会者が話を終えると

会場からは拍手が自然に起こった



そしてみんな

それぞれの会話をはじめ

もとの様なざわざわとした空間となった



私達三人は飲み物だけを持って壁際のソファーに座った



「一年くらい会ってないよね

最近どう?」結衣ちゃん



「何も変わらない

昔はいつも新しい何かがあって

誰かに会う度に「聞いて聞いて!!」って話していたけど

最近は同じような日々がただ過ぎているようで

・・・なんだかちょっぴり淋しいね」景ちゃん



私はそんな二人を見ながらあることを思い出していた



高校三年生の7月



結衣ちゃんの様に一流大学を受験する人たちは既に進路は決まっていて

私と景ちゃんはまだ決めきれていなかった



「先々変わってしまうかも知れないけど

将来、何になりたいかでどうすべきか決まってくる

二人はどうしたいの?」結衣ちゃん



結衣ちゃんはダラダラしている私達に少し怒った口調で言った



私達は

真剣に考えていなかったわけではないが

上手に将来を描くことができなかった



昔から

私は夢のない子で

小学生の頃の作文でも何を書いて良いのか分からなくて

隣の席の子が書いた『お花屋さんになりたい』をそのまま真似て

自分の夢のように書いていた



あの頃も似たような所があって

何も考えはないけど高校卒業と同時に就職し社会に出るのは少し不安だから

逃げとして進学しようか位に思っていた



結衣ちゃんは昔から強く思う夢があった



弁護士になるといつも話していた

弱者に手を差し伸べることができる心ある弁護士になりたい!

そう強く願っていた


結衣ちゃんはしっかり自分を持った子だ

きっとなれるだろうと私達は思っていた



景ちゃんは・・・



景ちゃんは少し前に言っていた

「看護師さんになりたい」景ちゃん



だけど最近の景ちゃんは少し違ってきたのか?それを言うことは無くなった



他に夢ができたのか?

看護師になる夢をあきらめる事になった理由があるのか?



その頃の私達には景ちゃんが何を思っていたのか良く分からなかった

だけど

何かに悩んでいたことは少しだけ感じていた


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