第36話「故郷(我が心の原風景)」

私は


部屋に 入ると


畳の上に 寝転ぶ


開け放った 窓からは


澄みきった 雲一つない空が


丸ごと つかみたくなるように


広がっている


それは


まるで 青き大気の精が


舞い降りてくるみたいだ


しかし 私は 


空を眺めるためでも


午後の仮眠をとるために 寝転ぶのでもない


そう 毎年 


この時期に お宮でおこなわれる


相撲大会の ざわめきが


私の家まで


風に乗って 聞こえてくるからだ


だが ざわめきや


勝敗の悲鳴を 聞くためではなかった


聞きたいのは 


相撲甚句なのだ


秋の 陰りのある日差しと


澄んで 憂いのある大気に


染みわたる 


あの相撲甚句が


何とも言えず


私の心を 締め付けるからだ


ああ 今年も流れてきた


懐かしき故郷の なつかしき歌声

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