第20話「子供のような時が来て」

子どものような


時がきて


わたしの心は 


ときめきと 空ろのなか 


なぜか 


輝く日射しで いっぱいになる



わたしの心の 


黄色い扉を 開け放つと


痛いほど 見覚えのある 


込み入った建物に 狭い庭


後悔とも 哀愁ともつかぬ


淡い日差しの景色が 


飛び込んでくる



それは


心を叩き 揺さぶる


懐かしい花の香が ただよい


聞き慣れた声が 


耳元を


静かに 流れていく



この後悔と 至福の時を


誰も 邪魔しないでくれ


ああ わたしは 


わたしを 抱きしめる


悲しいまでに 


力強く 抱きしめる


二度と 帰ることの出来ない 


わたしを


しっかりと 見つめる


わたしが わたしを


にらみ殺すように 見つめる



それは 


敵意からでは けっしてないのだ


わたしの慕情が そうさせるのだ


幼きわたしの


ああ


なんと純粋なことか



子どものような時が過ぎ


わたしは


わたしに立ち返る


その時 


タバコは


ふっと 


無言の吐息を吐いていた

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