第19話「十八才」
チェロの音が
激しくもだえ むせび泣く
私は視線を 外に投げかけた
外は 春
日差しうららかに
青々と茂った草を 木の葉を
貴女の吐息のような風が 静かに揺らす
かぐわしきは 五月の風よ
風は 貴女が去った彼の地まで
届いているのだろうか
栗色に輝く長い髪 そして愛らしい唇を
風は愛でているのだろうか
バイオリンの静かな音が そっとささやく
そして その音が次第に盛り上がっていくと
次にピアノが 重たき音を叩きつけ
神の手のごとく動き出していた
髙きから低きまで 神の手は音を生み出す
その間をぬって チェロがかすれたような音を出していた
ああ 青春の輝ける日差しと
暗黒の世界
淡く激しく それでいて苦くしょっぱい
悠久とも思える時間よ
どうして私は はじけるように勉強を楽しみ
どうして私は はじけるように遊びを楽しまないのか
悠久とも思える時間が 次から次へと去りゆくのに・・・
いつの日か
私は 人生が短いということを知るだろう
ああ
今 この瞬間は
私の目の前から音も無く去って行く
いつの日か
私は 人生が短いということを知るだろうに・・・
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