第18話
京子「ねえ祐介、ここで文芸部が勧誘出来ていない、その実情には触れないの?」
祐介「いや、そこは触れたいけど触れてはいけない部分だろ。ここにはそれなりに解っている人は居ても、それが事実だと告げる部外者が居ないからな。そこはここの部活に入った理由を持っている人達の集まりだから、それでは集められなかったとしか解らないな。」
加奈「ここに来ている理由?・・私が今の部に来ているのは部活で遣りたかった事が出来ましたが、それ以上に祐くんと一緒に居たくて・・それがすべてですね。」
京子「・・ダメね。加奈と一緒に来ている美佳もそうだし、私も祐介クラブに入ってるだけだから・・真面目な取り組みとか、そこでは理解してないもの」
祐介「何時出来たんだよそのクラブ?・・正攻法は、地味な努力なしにはあり得ないので、そこは頑張って下さい。裏ワザは所詮インチキですしその場凌ぎになりますけど、それでも検討方法として聞きますか?」
その問いに高梨は小さく・・はい ! と肯くだけだった。
京子「祐介!そんなのあるの?祐介以外よね?」
祐介「裏ワザだよ裏ワザ、今ちゃんと説明するって。概に合った読者コンクールの全学図書館協議会が促進している、概要に沿っている方向性に便乗と言うか思惑に乗るわけさ。対象の課題が個人購入だったり学校で用意したりで多種多様になるが、結果としての課題作品等はかなりの購買アップだ。そこでコンクールでの賞品は、いくらかでの返金みたいな図書券だったりしている。そこはオレ調べによれば、うちの学校でも応募者多数だったな。」
当然その内容は文芸部である高梨も知っているのと、そこへの応募も済ませている。
祐介「当然文芸部でも、その応募はしているはずだ。そしてその応募は、一般募集と部活に分けられている。それだけじゃなく、部活には部員の推薦枠まであるんだ。来年初夏のコンクールはどうする?自分1人の応募になるのは必至だろ?折角枠があるのに勿体ないし・・。この応募に課題作を読み感想文を出す訳だが、これって文芸部の活動と言えるだろ?認可が出来るのであれば、推薦枠に混ぜて遣ってもいいんじゃないか?図書委員では応募者を控えているから、誰を順番で提案していくのかは後で考えるとして、それを1年生だけに絞るのもそこは考え方次第になるけど、応募のエサ・・申し込みに部員として推薦すれば、そこで図書券ゲット確定じゃん。」
京子「今エサっていったよね?言ったでしょ?文芸部員になる条件としては、ちょっと微々過ぎじゃない?」
祐介「これの期待信頼良環境だって、その部活に欲する側には十分なエサさ。求めた物が単純な図書券だけど、使い方が明確なだけに嘘偽りも無い。文芸部への在籍を応募するだけの利用としておけば、仮入部感覚でコンクールに出られるって事では、目的条項は達していると思うけど?元の活動概要なんて、個人の頭の中じゃないのか?それでも文芸やら才能とかは」
加奈「はい。どんなに才能に恵まれたとしても、開花しないのなら才能とすら呼べませんものね。確かに他の秘めたる才を遠ざけるかも知れませんが、今にして吐出できて居ませんから愚鈍な後咲きを待って貰える世でも無いと思いますよ。ここの時代は、甘くない戦々恐々な世界なのでは?ここで一時の辛抱がこの劣悪な状況への愚作ですが、手を差し伸べた祐くんを貶める物ではありません。確かな打開策に、成りえる手法と言えます。ですが祐くんがここで進んで、愚作提案者になる必要があったのかは疑問です。」
京子「・・そうよね。それに最後の砦っぽいとこに引っ張り出されての、負け戦にしないって努力は理解してほしいかな。ここから何が成されるのも皆さん次第なんだけど、祐介を浅苦慮な故の捕虜の継続はもっと困るもの。ここは意志ある行動を互いに築く時合いじゃないかしら?してほしくない遠慮は、曖昧に見逃したりしない真意の視線で見合うべきよ」
祐介「・・さっきまでの、あのおチャラけ気分は何処に行った?今は波打ち際の浮輪になりたい」
京子「逃げ泳げるような温かい海が、そこに在っても入れる人は限られるわ」
祐介「・・兎に角、オレ達には別の戦場があるし、それなりに大変でもあるからな。通りすがりに好き勝手な事を言っているけど、そんな考え方もあるんだ程度の理解で構わないよ。随分と言われ続けた少子化社会で、細々と別れての部活ってのもこの時代に合っているかも疑問だろ?それらをまとめた文化部になった方が、今ならしっくりいきそうだ。」
財前副会長「こらこら。聞いていればいつの間にか、部活の在り方に携わる話しになってるぞ。新たに規則の見直しや改革は、生徒会長になって遣るとかにしてくれ。ここ数年は適当に無難に流しているんだから、彼は怠惰・・自堕落?そんな人とは私は思っていないぞ。」
祐介「思ってなくても言ってるし・・そんな大袈裟な改革案じゃなくて、文化部を作ってそこに文芸美術新聞部は問題なさそうでしょ?音を出す部はそっち分にすりゃあいい。備品も共同購入にすればそこはコストが削減出来そうじゃない?おやつもまとめの大量買いでさらにお安くなります。その辺は・・どうでもいいや。」
結局随分といい時間までここで話してしまったと思っていたら、その祐介の携帯にメールの着信音・・それに反応した加奈は、祐介の胸ポケットから携帯を取り出して「祐くん美佳ちゃんからですよ」と伝えた。祐介はちょっとすいませんと言いながら、この場で電波が入るのを確認し美佳に電話をする。
祐介「もしもし美佳さんですか?いつもお世話になってます。その後お体の方はご健勝でいらっしゃいますか?あ、はい。あーその件は今確認しますので、しばらくお待ちください。」
そこで祐介は京子と加奈に目配せして、その用件を伝え確認を取るのだ。
祐介「成敬北上々峰高等学校に保管の菓子用の物資なんだが、こちらでの必要分は搬出済で残ったのは不要かを聞かれている。冬休みに入る頃には賞味期限も切れるから、休み前に廃棄の手続きをしたいそうだ。休みに入ってから余暇にクッキーとか作る?その前に仕事並に遣るから満足しちゃうよねやっぱ。」
うんうん了解っすね。
祐介「こっちでは余分には要らないって、年末に無理に取れる時間もないしな。美佳が要るなら貰ってもいいけど、それは自宅へ宅配で送れよ。お金はこっちで清算する・・ああ・・そう、オレがちょこっと運んでやるルートが、今のところは浮かばないし・・いや、美佳をそんなに非力だと言ってはいないよ。おっちょこちょいで心配だとも言ってな~い。何となく・・そそ、一度気にし始めるとそれが気に成っちゃう人なんだよ。思い込みで心配しちゃうタイプ、その心配の先でケガとかされちゃったらダメージが大きいだろ?しっかり注意をしていても、突然事故に合う事もあるからさ。ほら精神的ダメージには特に弱いオレだから、そこは察してくれ。」
その電話を聞いていた文芸部の3年男子は、もうここの殆ど会話には参加はしていなかったけど、なぜか高梨の後ろに壁役としてそのままにいた。その人達が祐介の電話の内容を聞いて、相手への敬語対応が急に砕けたのが微妙に嵌ったらしい。
祐介「そうだ、ついでに言っておくけど今週末の土曜日は出勤の予定になっていたじゃん?だけど課外クでの外活動は無いんだよ。もう年末までは残り2回の土曜日なんだよな・・最終の土曜はイベントで潰れちゃうから、ここは休みが必要かなって一瞬思ったんだけど・・顔が見たいから来いや。」
おーっと、そう言ってしまってから思い出したのが、前日の金曜日には既に会う事の予定と成っていた。
祐介「アハハハ、そうだった。その前の金曜日にはこっちで会うじゃんか、早く言ってよそれ。まあいいや、翌日の土曜日も出勤って事で宜しく。・・えっ?顔、以外でも用事があるんだよ・・誰が体に用事があるって言った?・・あーでも、体目的ってのは間違いじゃないな」
加奈「!!!」
京子「ちょ?!」
3年男子「ええええ!」
祐介「うん、ここまで話したんだし言っちゃうけど、食べてほしいおやつが届くんだよ。これ財ちゃんが好きな系な奴のちょっと珍しいのが見つかって、それを財ちゃんに食べさして感想が知りたいらしい。オレ達他のメンバーはそのついでとか言われてその言い方はムカつくけど、そのスイーツに罪は無いからな。土曜日の午後に冷蔵庫・・配送車が来るから。」
京子「ちょっとそこで、何で配送車と冷蔵庫を間違えたの?普通のクール宅急便が、冷蔵庫に見えちゃったの?」
祐介「ハハハ、学校に届けるって言うから受取りしやすい土曜日にしたんだけど、授業のある午前中に来たらまずいから、そこは時間指定が出来ないのかって聞いたんだよ。そしたら冷蔵庫が来たと思っていればいいって言いやがった。それで持ってくる人が宅配便の人であってほしいと祈ってる。」
京子「祈るって・・会いたく無い人が、要るって事だよね?送り主はとっくに解ってはいるけど。」
財前副会長「そんなに顔を合わせるのが嫌なら、それを生徒会で預かろうか?すぐに食べるのなら、そこは冷蔵庫で十分保管出来ると思うぞ。」
祐介「いや会っても大丈夫・・それに人数分しかないので、食べれない生徒会の人が現物を目撃しちゃうって可愛そうじゃん。財ちゃんがこないだ食べたような感じの奴を見て、それを自分が食べれないってどうよ?」
財前副会長「解った!納得した。なんの規制も無い自分達利用の冷蔵庫で、あれを見たらきついわ~。見せた人を恨むよ、重罪人で死刑決定だよそれ。いやもう聞いただけで、しばらく眠れない夜を過ごしちゃうんだけどね。」
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