第15話 

その翌々日の放課後の早々に職員室に呼ばれたオレは、そこではちょっと落ち着きがない。


三皮先生「今日ここに呼んだのは、昨日のC・T・S セミナーが無事開催出来た報告と、準備のさいに煩わした謝罪がしたかったからだ。先に送られて来た依頼内容にあった見当違いを、まずは現場を確認してからの対処になると綿橋部長が言っていたので、心配はさほどしていなかったのだけどな。」


そんな知ったか部長ってば、何も苦労してないじゃん・・なのにいい顔したの部長なの?そんな恨みがましい事を思っている祐介だが、やる気の出ない月曜日に良く頑張ったと職員室で褒められている現状は、それなりにポイントは高いと言えよう。


三皮先生「準備の活動内容まで詳しくは知らなかったが、それでも準備期間とかに目安を立てると思ったのに、当日だけでコンプーリートしているのは相当な資材量を抱えての重労働じゃないのか?」

祐介「あの日は非常勤要員も要請しましたので、それほどの重労働ではないですよ。帰宅時間が遅くならない事を最大に重視していますから、作業を終えて現場から直帰出来るように、自分達の荷物を現場に持参する状況は、克服しているのでそこそこ軽装です。どこの学校も作りには大差ありませんから、模擬設定は思考しやすいですしね。」

三皮先生「・・まあ問題の無い手段と理解しておく。スキルやノウハウも・・ボランティア部のイベントに、協力して貰ってる内容で十分なものを持っていそうだからな・・そこで一つの相談もあったが」


相談とかの話しとなれば、何かをする事が前提だったりしない?何かをさせたいってか?


三皮先生「今の課外クには、常勤する程の仕事はあるまい?そこでボランティア部に掛け持ち・・非常勤要員になってみる気はないか?遣り甲斐のある活動だと思うぞ。」


フゥ~まったく・・祐介は冠を軽く左右に振って、よくまあ次から次へとあるもんだと思った。


祐介「そんな難しい問題をさらっと言われても・・オレだってそれ成りには在るんですよ。直ぐに高3になりますし」


☆彡その日の昼食時間


京子「三皮先生にボランティア部に移れって言われたの?それにどんな返事をしたのよ?」


祐介は職員室で三皮先生に言われた事を、自分のクラスの京子に話しをした。それがこの先の学校生活にかなりの影響が出る選択を強いられたのだが、今は京子の机の脇で購買から買ってきた昼食を置いて、ランチタイムなオレをクラスメイトは訝しく睨むのだった。そっちの方がもっと大問題なのではないか?教室で仲良くお弁当とか遣っちゃってるな・・。


祐介「・・断ったよ。ってか、部活を2つの掛け持ちで誘われたんだ。遣る事の決まった単純作業で、時間のバイト程度の部活なら出来そうだけど、両部活とも相手に融通を聞かせたりする場面もあるから、元の根本に無理があるだろ?ボランティアなんて、まだよく解らんし」

京子「断ったの・・なら別に良いんだけど。ボランティアは・・今度遣るじゃない。」

祐介「いや遣んない。今度のイベントはボランティアじゃない。園児達が老人に見せるのは老人達からの要求じゃないし、老人達に見せたいから手伝ってと園児達に頼まれたものでもない。ボランティア部が双方に押し付けた事を、オレらは自主的に手伝うだけだ。言い方は捻くれた感じになるけど、自分より劣ってる人や恵まれていない人や、災害救済とかを遣れる人間になった訳でもない。身分不相応な事を遣りたいって掲げるのは、オレには抵抗があるんだよ。遣ったのか遣ってないのかの、解り難いゴミ拾いとかならいいけどな。」

京子「高校生に救済を求められても困るってのは、解る気もするけど・・そもそも主義主張をしっかり理解して参加している人より、求められた物や人力にほんのちょっとの力添えをしているって人の方が多いと思うわ。他力本願は間口が広ければ広い程、可能になりやすいもの。回収機にペットボトルのリサイクルを、気にかけているんだから、そこそこは遣ってる仲間には入ってるんじゃないの?少なくともボランティア部からは、求められてのお手伝いなのよ」


あーそっちから来るのね、なし崩しに・・確かにおおまかなら遣ってるのか?そんな祐介であった。

自分で作った自分用の弁当にわざと嫌いな物は入れない京子だが、食べれる量までは計算してはない。無理してまでは食べずたまに祐介の口に運び処分しているのだが、そんな都合を知らずに理解する人は稀だろう。

大多数の人は無理解者!声を潜めてヒソヒソされれば、そこは気になるのは当然でそうとなると、口も手も疎かになり無駄に時間のかかる昼食にだ。

そこで嫌な予感が・・新たな侵入者が近づいて来るのを感知したのだが、その人物は近くに来る程にどんどんスピードが落ちていつの間にか止まった・・何なんだよと睨みながら顔を向ける祐介の口に、新たな食物が運ばれ旨いと言って口元が緩んだので、それはとっても変な顔になった。


多田「お食事中にご免なさい。ぼくは新聞部の多田勇雄です。お聞きしたい事があって、昼休みならとここに来ました。」

祐介「・・ングっ!このまんま、継続でいいのなら構わないけど。答えられるのは知ってる事程度と、人間関係はセキュリティが最強です。京子のスリーサイズは国家予算に匹敵してますが、そこは極力便宜を図ります。」

京子「今の売る気ってか、売ったよね?価格が出たじてんで、漏洩したと同じでしょうが」


そこで箸が・・オレには危ない区域で暴れてます。


多田「いえいえ、不穏な騒動を起こしに来た訳ではないです。ボランティア部の方に確認しましたら、今回のイベントのリーダーシップを、課外クの方で取っていらっしゃると聞いて、先日土曜に部室へお伺いしましたが、その日は外出されていたのでそれならと放課後より昼休みが良いかと思って来ました。仲良・・昼食の時間にすいません。」

祐介「か・・勘違いしないでよね?男子に相手にされないからって、負け犬なんかじゃないんだから。気持ちはいつも男の子に・・疲れるからまあいいや。イベントの何について新聞部は聞きたいのかな?そこそこの詳細は生徒会に提出してあるし、お手伝いに財前副会長も参加・・あっ!当日に取材したいって事か?こっちは当事者達のお涙ちょうだいを売り物にはしないし、ボランティア部や課外クだって・・真実だって道義に外れたらダメだろ?」


ここで京子が飲み物を「はい!」と祐介に渡し、そこで喉を潤し再度気合を入れる。その会話の声音が高くなって来たので、クラスメイトの注目度は一気呵成のうなぎ登りだ。


祐介「今度のイベントは確かに課外クが率先して動いている流れだが、立案はボランティア部であってボランティア活動に課外クが応援に当たった構図だな。それは戦地の救護所で負傷者に写真を撮っていいですか?って言って撮る奴と大差ないだろ?それなら生真面目に前だけ向いて少しでも昨日より成績を向上させてるスポーツ部の、血気溢れる奴らを取材したほうがいいんじゃないのか?」

多田「・・ええ・・まあ、そうですね。こちらと多少思いの違いもありそうですので、今回は辞めておきます。それではこれで失礼しますね。」

京子「どうも!お疲れ様ね。ほらちょっと祐介、こっち向いて口元・・うん、大丈夫ね。何食べたか解んなくなっちゃったでしょ?お腹足りた?」

祐介「ほんとだ!あいつのせいで食った気がしねぇ。食べてる時はちゃんと集中してないとダメって事だな。」


新聞部を相手に憤怒した祐介にクラスの雰囲気は劣悪だったが、そこへクラスメイトの女子が祐介達二人に話かけてきた。


蛍名「いや~坂上君、ちょっと熱くなってたね。このまま行ったらどうなるのか、心配しちゃったよ。」


この女子は以前に3人で京子に近づき、オピニオンリーダーに担ごうとした人物「おー蛍名が巨乳戦士に話しかけたよ」彼女のツレは別の女子とスマホの画面を頑見だった。くっ ! 誰が巨乳戦士か ! オレが巨乳みたいじゃねえか。巨乳を持ってもいねえし、そんな巨乳と戦ってもいねえよ。スマホはあー・・アプリか何かか?新しいモン好きは一人で遊べる物でお気楽になれるが、友達と呼んでた人までアプリと交換しちゃうからな。そこでの最適化の仕方が軽すぎるぜ。つまり目の前にいる人物は、きっとクラスメイトらしいと再認識しただけだが。


祐介「ああ・・スマン。さっき来た新聞部が取材したいイベントは名前だけなら聞こえは良いけど、その中身は肉体労働の完全押し付け作業なんだよ。ボランティアなんて「私こんなに頑張りました」とか出ちゃったら遣らせ番組なみに炎上間違いなしだし、吊るし上げまでありそうじゃん。クリスマス過ぎたら年末なんだから、その辺は勘弁してほしい訳。」

蛍名「あ~大丈ブイだよ。みんなはちょっと驚いただけだし・・老人ホームでイベントの事は、噂程度には聞いてるよ。でもいいの?それでも部活動である訳だし、まして他の部活の応援を休み返上で参加するんでしょ?しかもメインっぽいし。さっきの新聞部への対応も今の話しも・・美談が失笑談になってたよ。でも老人ホームに押し付けって・・拘りがあるとか」

祐介「いや・・いるけど拘ってはい無いな。祖母が一人残ってるけど滅多に会わないし、会いたがられないし?何処にいるのかも知らないしな。」

京子「うわ~。自分のおばぁちゃんの居場所を知らないって何それ?訳解んない。」


解んないのは僕も一緒です。ってか、オレがお祖母ちゃんに嫌われてる訳じゃねえよ。忙しい人なんだよ・・きっと。それより京子のおまえの人付き合いの悪さと一緒にすんな。そこはオレが聞いて知ってる限りじゃ高校に入学してから最近までの一年以上は、友達らしき者も居ないって話しじゃねえか。言い寄って来ている男はそれ成りに居たけど・・あ~居たな。その一人は完全に知っている・・むしろその話しに関わって、敵対してしまうとはオレなりに情けないか。

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