第14話
此処は某有名私立高校・・勝手に名前が出せないそんな高校の玄関窓口で、祐介達は校内入場の許可を貰った。そのついでにだが、生徒会室に自分達が到着した事の連絡をして貰う。
その人数は4名なのだが、そこで荷物を持っている男子1名は飲料の類のバックが1つだった。ポッケには少しだけ顔が出る程度の物を、各自が持っているだけである。荷物の運搬要員として非常勤部隊の申請がされていたのだが、荷物は学校から駅まで・・学校で必要なカバンは依頼現場には不要なので、駅前のロッカーにまとめて突っ込んで置いた。
そのままどこかに遊びに行く悪い学生と間違われそうな行動だけど、聞かれれば説明出来る書類を携えていた。受付で校内入校の許可書を貰い後は指示通りに生徒会室に足を運び、以前に顔合わせをした生徒会役員と挨拶を交わした。
今回も会長は爽やかさを意識した装いで、豪華な顔ぶれを引き連れて来たオレ達に向かい合っても、それを意識していない振り?でオレに話しかけて来た。
会長「文書で先に連絡させて頂いた内容で、設置の作業をして頂けると助かります。こちらでは助成要員も待機させていますが、その他の不足分は私たちも助力いたしますので仰って下さい」
祐介「有難うご在います。頂いた書面は確認して来ておりますので、まずは依頼に対応可能かの会場の確認作業ですね。特に大切なのは、設置機器と分電盤の距離ですが、それが届かないとお話になりませんので・・」
それでは早速ですが、先に第2会場に行きましょう ! と、その案内をお願いした祐介達の移動が始まろうとした時に、そこで京子が祐介を呼び止めた。
京子「祐介さん、私達もご一緒したほうが宜しいのですね?」
おおっ!何でしょ?このいいとこのお嬢様振りは・・何がそうさせているの?
祐介「ああ・・先に会場の確認をするから、みんなも一緒に移動してくれるかな?」
京子「加奈さん!美佳さん!それでは参りましょう。」
加奈と美佳は恭しく「はい」ええっー今日って、そんなシチュ?聞いてないよー。まずは最初に第2会場の部屋に行って、そこで分配器の距離を確認する。はたして届くかどうか?実際にケーブルを繋いでから、第1会場の確認に行く案内をお願いした。ここに来るまでの移動で、ちょっとだけ打ち解けたと判断したこちらの会長は・・
会長「この後本格的に2箇所で作業をするとなれば、2組体制に別れてになると思うのですが、貴方の他に配線関係の作業はどなたがするんですか?」
こ、この質問は何と答えるのが正解なんだ?祐介はその答えを誰が導いてくれるのか?3人の顔を見渡すと、目を反らして知らんぷり・・あうっ!お嬢様だけに何もしないが正解か?
祐介「設置は誰でも可能なのですが、場所の確認が優先しますので今はまだ決めてません。適所適材は才色兼備な彼女達には不名誉な肩書ですので、必要な設置配線図は第1会場での確認作業後に配布します。」
そこで祐介は考えながらも第2会場を後にして第1会場に向かう、以前にお願い済な案件で今日到着した時にも確認を済ませていた、ここの放送室を今は稼働して貰っている。
流れていた放送用の音楽が配線を差し替えた事によって消えた・・わざと消した訳だが、スピーカーに流れていた電流を間の映像機器に割り込ませたので、映像機器の電源をいれる事によって、元の状態に復帰して音が流れるのを確認した。
これで第1会場では映像機器までのコードの長さの確認と、持ち込みのスライド投影機を設置すればいいんだな・・終わるのが早過ぎか?そんな思慮中の祐介に天使の給水タイムか?
加奈「・・のどは乾きませんか?」差し出された飲み物を無意識に礼を言いながら口に含み、そのまま返す仕草をすると今度は美佳がそれを引き取った。その後は沈黙したまま第1会場に入り、祐介が抱えていたスライド投影機をカバンから出して、講師が自ら操作する位置に設置を済ませ持ち出したケーブルが2台を繋げるかの確認を終わらす。
マイク型集音器のケーブルの距離?10メートル以上の離れた場所からでの質問の遣り取りは、前に出て近くに寄って貰えばいいんじゃね?って勝手に解決しちゃったよテヘ!取りあえずOKかなって顔を上げると、うっすら滲んだ汗らしきものを加奈が拭いてくれた。
その加奈の優しい顔を見てマジオレの天使と思って悦に入っていたら、会長から突然に声がかかった。
何惚けてんの ! とは言われず、加奈を視線から外せる位置から睨むような目線で問われたのだ。
会長「両方の会場も確認作業は出来たと思えますので、そろそろ分担作業で取り掛かって貰えると助かるんですが・・」
祐介「あ、はい。このマイクの電源を入れて音が・・出ますね。テスト!テスト!皆さん聞こえますね?それではこれで今回の設置は終了させて頂きます。お疲れ様でした。」
会長「えっ?終わり?これで終わったって事なんですか?」
京子「終わりね?は~い終了!帰ろ~。美佳、わたしにも飲み物を頂戴。」
美佳「はい。スポドと2種類ありますけど、どちらがいいですか?」
京子「今日は当たりだったのよ。新発売物好きの祐介なのに、私好みを当てるとはちょっと悔しいけど」
アッと言う間にお嬢様は失踪したんだな・・飲み物に群がる二人に、祐介は軽い溜め息が出た。
加奈「私にも少し・・」
祐介「みんな!程々にな。今日は早く終わったから駅前にあったアイスでも奢るよ」
京子「早く言って!それとっても重要じゃない。あー美佳が途中で飲むのを止めた。加奈もなんで離れるのよ?」
えぇーっと、シングルとかまずない・・な。トリプル4人分とバラエティパックは、どっちが得なんだ?
この場所からだと加奈母へのお土産にはちょっと無理だと、小声で加奈に呟いていたら、会長は今だに信頼・・心配しているので、第1会場で出す信号音を第2会場で確認して、それで納得して下さいと部屋を追い出した。
何の許可も貰わずさっさと帰る「もう帰りますよって、挨拶は必要だよね?」訳にもいかないので、周りの様子を伺いながら待っていたのだが、会長以外の生徒会役員が残っていたので、オレは余計なお世話を焼く事にした。
祐介「ちょっと聞いてほしいんだが、今回の依頼の件だけど立案は別として、2箇所の会場の使い方が、立案対応の理解が浅慮な会長の考えで、出されたものだと思っている。その理由はそこでの質疑応答が、されたような形跡が見られないからだ。質疑応答が成されていたなら、音声ファイル付のメディア鑑賞とスライド仕立ての質疑講義は、まったく別物だと気づくはずだ。そして会長本人がこの依頼の不信を考慮せずに、ここで陣頭指揮を取っていたのもある。その結果がこれだ!的はずれな依頼を受けたオレは、あん達の支持している会長を蔑んでいた訳だよ。もうちょっと生徒会としてだな・・」
京子「もういいから止めなさいって。ここでそんな事を言って罵り蔑んだ酷い奴になってあげたって、解って貰える保障なんてないんだから。わざわざ悪者にならなくたっていいのよ、何が大切なのかなんて人それぞれの価値観なんだかさ。ここでは祐介が差し出せる手の範囲なんて、限られてるんだから。」
祐介「・・いつもスマン。京子には、言わなくていい事まで言わせてしまったな。ほんとうに悪い。」
京子「・・大丈夫!そこは報酬に、アイスが一個増えるだけだから」
美佳「わ、私だってそう思ってましたよ!思っていればセーフですよね?アイスを」
こらこらどっちなの美佳さんよ。アイスの話しで笑いに振ったのか?アイスに盲目なのか?アイスってそんなに大事?って加奈に聞くと、そこでフィっと目をそらされた。祐介達は生徒会役員等から無言の見送りを受け、私立広尾付属高校を後にした。何も無かった・・ここ数年は会っていなかった?たった1人の従妹である、田口由紀恵が目の前に居たのにだ。まああれだな、ここで親戚だとか言うとまたメンドイか・・
そんなC・T・S セミナーが終わった後は、残した機材の回収担当を部長が遣っている。その機器を回収しないと部室で遣ることが無いよね?そんな理由だが。活動して成果を向上させる本来の在り方とは違って、課外クはあくまでも講師講習のバックアップをする為に存在しているのだ。
しかしこの学校からの依頼が生徒会経由なのが、すでに違う気がすると祐介は思っていた。教育者育成活動のプレゼンなのこれ?プレゼンと一緒に育成も遣ってるらしいが、その内容を確認しないと支援出来ないとかって、何か狂って・・ズレていそうだ。祐介が今日に抱いた落胆は、みんなのアイス三昧でさらなる留めが刺された。
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