去りし者は、儚く、愛おしい

暗闇の中をセンターラインだけ見ながら、
左カーブに沿って体を沈めていく。

音だけが聴こえるが、
奴は既に次のカーブを曲がっている。

なんとか体を入れ替えて、
次の右カーブに差し掛かろうとした時、
奴のバイクの音が消えたのに気づいた。

遠くで何か聴いたこともない音がした。

依頼、奴に追いつける可能性は消えた。


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その山のカーブには、
今はもう減速舗装がしてあって、
当時の様に、スピードを出して曲がる事など、
とてもできない。

多分、そんな青春の影を焼き付けた場所が、
誰にもあるはず