仲のいい女友達からクリスマスパーティーに誘われた菜摘なつみは悩んだ末に学生時代最後と言う思いから出席を決めた。

そして航介にもその日のうちにメールを入れる事にした。

近況報告で済ませるつもりだったのだが、秘めていた思いが次々と言葉になって表れてしまった。

「…私も航介君と一緒にオランダの道をロードバイクで走ってみたいと言う思いはありました。

でも私にはそれ以上に強い思いがあります。

私は航介君といつも一緒に走っていた旭川沿いの道が大好きでした。

川面かわもに映る夕焼けの煌めき、児島湾大橋の長い坂の上で全身に吹きつけて来る潮風、そして金甲山の山頂から見渡す岡山の街並み、夕陽を浴びて茜色に染まった瀬戸内海の島々、貝殻山から見下ろす小さな港町の風景…みんなみんな大好きでした。

決して忘れることはありません。

ありがとう、そしてオランダでのご成功を陰ながらお祈り致します」


逡巡した末のメールだったが航介の沈黙は続いた。

そして菜摘なつみは航介からの返信のないまま三日後のパーティー当日を迎えた。


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