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加川航介は菜摘なつみにとって大学のロードバイクサークルの一年先輩だった。

サークル内で図抜けた実力を持つ航介のペースに、ただ一人ついて行く事が出来た女性メンバーが菜摘なつみである。

菜摘なつみが三年になった頃には、二人はパートナーとして共に走る様になりそしてごく自然に恋に落ちて行った。


その夏、航介は菜摘なつみにある夢を語った。

それは自転車先進国オランダに生活の拠点を移してプロのロードレーサーを目指すと言うものである。

更に今、オランダで就労する日本人には労働許可不要の特権があるので、既に現地の企業に自分を売り込むメールを繰り返し送ったと言う。

ところが同じ秋に、その特権が予告なしに廃止となった。

「また、チャンスはあるよ」菜摘なつみは在り来たりな言葉で慰めた。

すると、いつになく鋭く射す様な視線が返って来た。

「現地で生活の基盤が整えば」航介は真顔で言う「直ぐに君を呼ぶつもりだった」


そして2社から面談のオファーが届いていた事を知らされた。

この面談も白紙に戻された訳である。

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