朝焼け

杜若

朝焼け

私の朝は早い。

特段することがあるわけでもない。

布団から起き上がると、冷蔵庫に向かい一杯の水を飲み干す。冷たい水が寝ぼけた頭をシャキッとさせる。

寝ぼけたままではこれからの時間がもったいないから。


私はマンションの一室に住んでいるのだが、ベランダに出ればそこそこの景色を眺めることが出来る。

夜景となれば、その風景を写すと撮る人が撮ればちょっとしたものになるだろう。


しかし


私はベランダに出て低い壁に肘をつく。

もうすぐだ。もうすぐここから見える景色で最高な時が来る。

晴れた空にうっすら雲がかかる、こういう天気のときは一層洗練されたものになる。


太陽が顔を出し始めた。


この景色に出会えた私はなんと幸運だろうか。

見ない人はおそらく、これからも殆ど見ることはないだろう。しかし、出会ってしまえばこんなにも簡単に最高の景色と出会える。


なにも、美術館などに行く必要もない。

こうして自分の好きな、しかも日によって予想もつかないように変わっていく景色がすぐそこにあるのだから。



刻々と移り変わる朝焼けは、そのうちにぼやけた明かりをはっきりさせてあたりを照らし出す。


あぁ、終わった。


どうやらこの景色は、満足感と一緒に喪失感までくれるらしい。

そのせいで明日がまた楽しみになる。


いつの日だったか、朝焼けの景色に魅了された私はそれまでとは世界が違ってみえた。










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朝焼け 杜若 @514322

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