第72話 無頼の履歴

 広志は、孤児であった。


 肺結核に倒れた母と離れ

四国の親戚で冷たく寒い6年を過ごした。

 

 中学1年の時に柔道を始め

強くなりたい、強くなりたいの一心で

稽古に励んだ。


 その時の柔道の先生、少林寺の先生で

ありながら、広志の稽古を買って出てくれた

先生に今も感謝の念を持ち続けている。


 出来れば、少年達の心にいつまでも残る指導者でありたいと

秘かに念願もしている。


 ただ、一時期は、自暴自棄に成り果てた無頼の時期もあって

自分には指導者は無理と思い込んでいた。


 合気道が広志を救い出してくれた。

4年間の稽古と、その後の厳しい会社員生活で

何とか人並みに生きていけるようになった。


 剣道を始めてから、たたかれたり、しばかれたり

突かれたり、いろいろな辛い目にもあったし

目の障害にも悩まされたがその度に

何とか切り抜けて、生きてこれた。


大怪我は、ケガの功名となった。


 今は、故郷の荒れた海から、穏やかな瀬戸の海に

移り住んで来た安堵感で一杯である。

夕暮れには、夕陽に向かって感謝の言葉を述べる。

「ありがとうございます・・・・」

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