第69話 退院
白い天井が見えた。
由紀や息子たちが居る。
心配そうに自分を見ている。
あーーああーー、これは、現実なのか、夢なのか。
水!水が飲みたい!
由紀が広志の口に水差しを差し込むと同時に
勢いよく水を飲む広志。
2口飲んで
「ふううーーっ」と大きな息をして
再び眠りについた。
愛甲先生がすぐに来てくれて
「傷は深かったけんど、少しだけ急所をはずれとったんで
それが良かった。多分安心して眠ったんやろから
もう大丈夫や。あと、かなり痛がるやろけども
まあ、ちょっとの辛抱やで」
家族一同顔を見合わせて、涙、涙のぐしゃぐしゃ顔であった。
真夜中に目覚めて
どうしても、コカコーラの冷たいのが飲みたいと
むずがる広志に
水差しの水を一口だけ飲ませて
「お父さん、辛抱、辛抱!」
「・・・うん、そうやな・・」
「退院したら、バケツ1杯飲ませてあげます!」
有難い家族である。
それでも入院は、1ヶ月に及んだ。
えぐられた部分の回復に時間がかかり
歩くのは当分、松葉杖であるが
笑顔の退院であった。
地元の新聞に、誰が投稿したのか
「還暦剣士 頑張った!」の記事が出た。
なにやら、照れくさい広志であった。
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