第60話 なるほどなあ。

  突きは、昔、合気道でやっていたが

あくまでも形だけであった。

杖を使って、24本の形を、きちんとこなせれば

初段は、合格する。

相手に対面しての突きは、危険すぎる。

突きは、とにかく早い!

しかも、防御がやりにくい。

急所に当たれば、えらい事になる。


 次の稽古でも呼ばれて、対面した。

「蹲踞で前に出るように」と言われた。

前に出たら、突きが来る。

冗談ではない。その手にはかからんぞ。


 蹲踞の後、瞬間だけ前に出るようにして

すぐに退がる。

これならどうだ。

かなりの瞬間技である。


 小手が来た。

かなりきつい。

思い切りしばかれた。


こんなこともあろうかと、右腕には

サポーターを巻いてある。

その上に小手があるので相手には、わからない。

小手は決められたが、思い切り面を打った。

決まった!


 「そんなんでは、なんぼ打っても、審査員は認めんぞ」

そういわれたが、元々、審査用に

稽古しているわけではないので、へっちゃらである。


 真剣勝負であれば、右手首は、斬り落とされたが

相手の頭は、真っ二つにした! と言うところだ。


 大体この手の稽古者は、その内に来なくなる。

案の定、1ヶ月を過ぎたころには

姿を見なくなった。


 石坂先生に地稽古をつけていただく。


無駄打ちしない事。

相手をよく見て、ジリッ、ジリッと詰めて行く事。

面は、きれいで強いので、自信を持つ事。

間合いの取り方も絶妙。多分合気道の稽古の賜物であろう。・・と。

しかし、こうも言われた。

若い者は、打って来ないということで、イライラするやろな。

それと、級も段もないのに、カッコつけやがってと

思ってるのが結構おるやろな。

なるほどなあ。そういうことか・・・。

そんな風に思われてるんか・・・。

広志は、いろいろな、しごきを受ける原因がわかったような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る