第59話 突きに備える

 稽古終了後、道場の横の応接室で、寛ぐ先生方の中に

広志が居た。


「ようなったなあ。びっくりしたわあ。

 増田さん、3段くらいすぐ行けるぜ」

森先生のお褒めの言葉を頂戴した。


 他の先生方が、ニコニコしながら

「ほんまになあ。ようなった。

 どこぞ、別の道場にでも行きよるんか?」

むろん、どこにも行っていない。


 帰宅後、広志は、面の突き垂れの内側に

更に1枚、別の垂れを自作で付けた。


 家にあるいろんな物を総動員して

あれでもない、これでもないを

繰り返して部品を作った。


 今日の突きは、又、飛んで来る。

用心に越したことはない。


 頚動脈をやられてからでは遅いのだ。

気がつくと時計は既に、午前3時を廻っていた。



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