第56話 「あんさん、3段?4段?」

  自分の剣道形は、単なる、うわべだけの猿真似であった。

剣理を学ぼう!

広志は、仕事の合間に、県立図書館に行き

専門書を読んだ。

自分が経営者だ。

自分の時間は、自分が使う。文句があるか。

そんな心境であった。


 広志の携帯が、館内で、けたたましく鳴って、図書館の女性職員が

走って来て注意を受けた。・・事もあった。


 車の後部座席に、竹刀と木刀を乗せておき

ここぞと言う場所では、人目を気にせず

素振りと形を稽古した。

何も、道場だけが練習場所ではない。

地球上全てが稽古場だ。

そんな気持ちであった。


 市役所の大きな駐車場の隅で稽古していると

たまたま通りがかったおっちゃんが

「えい、振りしてまんなあ。あんさん3段?4段くらい?

 素晴らしいなあ!」

「わて、時代劇好きでなあ・・。

 あんさんの見てると、なんかほんま気持ちえいわあ」


 事実、かなりの向上は自分でも感じていた。


審査に落ちてから1年の歳月が過ぎ去っていた。

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