第38話 猪 いのしし イノシシ

 ゴルフの先生である宮城さんから電話があったのは

そんな時であった。

「何しよんならあ、ゴルフ行こうぜ!」

久しぶりであったが参加して

気分が幾分晴れた。

剣道の技術は、ゴルフにも役立った。

スコアが、随分良くなり、準優勝した。


 ゴルフ場内のドライブコースを左に曲がり

山道を下る広志の眼が、対向車線の何かを捕らえた。


 急停車すると、曲がり角にチラッと動物が見える。

極めて小さい動物である。狸?

広志は、運転席のドアーを開けて外に出た。

なんと!猪!!ウリ坊であった!

それも4頭!いきなり現れた車に驚いて

4頭全員が、キョトンとしている。


 しかも、左から横1列に整然と並んでいて

左側が1番背が高く、右に行くに従い

小柄になっている。

 広志は、急いでベルトのデジカメをガンマンのごとく

取り出そうとしたが、あいにく、カメラは

ゴルフ場の脱衣場で、ボストンバッグに

入れてしまっていた。


 撮影出来ずに歯軋りする広志を横目に

4頭は、すぐに横の雑木林に消えた・・・。

指示したのは、1番大きいウリ坊のように見えた。


 長く感じられたが、ほんの一瞬のハプニングであった。

子供の猪が居たと言うことは

傍に親が居た可能性が高く

広志は、ヒヤッとしたものを感じて

急いで運転席に戻った。


里山が崩れ、動物が人間の領域に押し寄せている。

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