第37話 惨めさを噛み締めて

 意味はわからなかったが

広志は、原氏に一礼をして稽古を始めずに

元の地稽古待ちの所に戻った。

正直、不愉快であった。

だいぶ前になるが、横山にしばかれた時の

不愉快さが戻って来た・・・・。

 何事もなかったかのように

道場では、稽古が続く。


 広志は、稽古を再開した鉄舟先生の前に

進み出て、軽く面打ちをさせてもらった。


 先生は、打ちの合間に、両手を広げ

呼吸法をするように指示してくれた。

広志は、思い切り吸い、思い切り吐いた。


 武道の稽古は、楽ではないなあ・・・・。


何故、怒鳴りつけられたのか、意味がわからなかった・・。

一回りも、或いはそれ以上も年下に怒鳴りつけられる・・・。

その理不尽さと、自分が最早、老年の域に達していることに

愕然とした。

これからは、剣道に限らず、このような

目にあうことが、増えるのであろうなと

寂しくなって来た・・・。


 16年間、飼っていた愛犬が最早、傍に居ないことも

寂しさの原因であった。

いろんな事を忘れようと始めた剣道が

ストレスの元になりつつある・・・。

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