第35話 何や 初心者やんか

 自分が休んでいる間に、原氏は、石丸先生から剣道形の

特訓を受け、広志より数歩先を行く腕前になっていた。

再び形稽古を始めたものの、今ひとつ息が合わない。

広志のところで、石丸先生のアドバイスが入り

稽古が度々、中断する。


 元々、固定した枠に、自分を当てはめる事が

苦手な広志は、即興で何かをこなすのは得意でも

こうしなければならないとか、こうであるべきと

言う世界が、超不得手だったのだ。


 勤務していた頃は、それでも何とか

辛抱に辛抱を重ね努力して来たが

今となっては、遠い思い出。

出来ることなら、所謂、MUSTの

世界からは、離れたかった。


 対面している原氏が、少しずつ、苛立って来ていることは

薄々感じてはいたが、気付かないふりをしていた。

石丸先生は、熱心に稽古をつけてくださるが

どちらかと言うと、地稽古の方が

遣り甲斐が感じられたし、自身、スッキリした。


 それと、どうでもいいことだが、彼女の厚化粧が

どうも気にくわなかった。

驚いたのは、足の爪にも、マニュキア?

何と言うのか忘れたが、稽古相手としては、好感を持てなかった。

 

 相手は、広志を、相当な剣道のベテランと

初対面時に感じていたようだが

実際には、級もない、段もない、初心者と知り

その後

態度が、ガラッと一変した。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る