第32話 なんでなあ あんなええ先生が・・

 年が明けて寒稽古の時期となった。

広志も女性も熱心に剣道形の稽古に励む。

あっという間に

季節は、変わろうとしていた。


 ・・月末には桜の開花が聞こえてくるかな?

桜の花を見ずに

広志の合気道の先生が、亡くなられた。

高知で8年間、稽古をつけてくれた先生であった。

25歳から33歳まで、転勤で高知を出るまで

ご指導戴いた恩人の死・・・・。


 これは、こたえた・・。

先生が糖尿病を患っておられると

聞いてはいたが、こんなに急に亡くなるとは・・・。


 死因は、間質性肺炎。

なんで?なんで?

仕事柄、医療関係の知識のある広志は

不思議に思った。

副作用?


 案の定、先生は、治したいの一心で

北海道まで飛んで、漢方薬を入手

飲んでいたらしい。


急な恩師のご逝去は、かなりこたえた。


 「 高知に帰ってきたらな

     又、昔のように合気道しような」

 先生と仲間と、共に汗を流した高知の道場が

無性になつかしく、道場の畳の匂いが

涙と一緒くたになって蘇ってきた・・・。


 その夜、広志は、高松の飲み屋街を

一人で飲みまわった。

タクシ-の座席に飛び込んだのは

朝の4時だった・・・・。


 

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