第23話 痛み、怒り

なにが「胴打ちしましょか」や。

相手を棒立ちにさせておいて

それで防具の下を、したたかに打つのがあんたの胴打ちか!

翌朝も痛む右腰骨と横腹を気にしつつ仕事をする。


 広志は60歳ながら、自営業の仕事を持っていた。

車の運転時間と距離もかなりのものである。

高知県から徳島県そして香川県へと。

デジカメをいつも右腰のベルトに差して

いつでも写真撮影ができる様にしている。

彼のブログは、地味ながら累計2万5000件以上の

アクセスを積み重ねて来ていた。

県外の風景写真が好評であったのだ。

今朝はその部分が強烈に痛むのである。

丁度、シートベルトが喰い込むのである。


 仕事中もゆうべの胴打ちを考えてしまう。

地稽古での打ち合いで打たれたのなら

何も文句はないのである。

相手をジッと動かないようにして

防具装着部分以外をしばきあげて来た

横山に猛烈な怒りを感じた。何が7段や!!(怒り)


 その夜は、町内会の自治忘年会であった。

春に隣町から引っ越してきた広志には

顔見知りもなく手持ち無沙汰であった。

由紀に出るように言ってみたが

そういう時に限って丸投げをしてくる・・・。

何が妻や!それでも妻か!八つ当たりである。

が、剣道のことは一切妻には話さなかった。


 横腹が痛んで、何やらビールがまるで

石鹸水のようである。

中締めで早々と引き上げて来た広志は

自分のどんな所が相手の何を刺激したのか

考えてみたが、何も思い当たることが

ないのである。

会話も殆ど交わしていない相手であった。

それが、何か薄気味悪かった。

何かで恨みを買ったのか・・・

1週間たっても痛みが引かず

骨はキシキシと痛み

腸は、差し込むような痛みが続いた。

次の稽古そして翌週の稽古も休んだ。

森先生から電話が掛かってきた。


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