第20話 「胴打ちしますか」

  形稽古と言うものが、実に良く出来ていると

感じられるようになれば、進歩は早い。

永年の剣道界のエキスが、形に凝縮されている。


 石丸先生は、高齢の身体を押して、いつもより

早く道場に来てくださる。

遅れてはならじと、広志も早く家をでる。


 稽古前の30分は、親子鷹のように

2人が剣道形に没頭する。

その最中に少しずつ、剣士が現れ

6時過ぎには、20人以上となる。

この中には、高段者ではあるが

剣道形が苦手な者も含まれており

それぞれが、着装しながら2人の稽古に

見入っている。

7時過ぎには、地稽古が最も賑やかになる。

「益田さん、熱心やねえ」

声を掛けてきたのは、横山さんであった。

「胴打ちしますか」

何か嫌な予感がしたが

広志は、横山と対面した。




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