第18話 剣道形 始め!

 紅葉の季節となった。

 

真面目に、きわめて真面目に、けなげに稽古に通って来る広志に

道場の有段者が次々と稽古をつけてくれるようになった。


20人ほどの組織でなんと10人近くの方が

教えてくれるようになった。


中川さんが、袴姿で近寄ってきて

「益田さんが真面目やから、みんなが刺激されてなあ

ほんでなあ、みんな教えとうなるがよ。

人徳やなあ」 とニコニコしている。


なにせ、自宅から道場までは20km近くの

道のりがあり、国道の峠を2つ越えなければ

ならない。

対向車のライトがまぶしくて

広志は、夜もサングラスをして運転。

視力は、少しずつ落ちて・・・・。


それでも

習った事は、帰宅後にノートに記録し

稽古のある土曜日は、その日に習得したい

剣の動きを2,3イメージする。


眠る前には、疲れていても見にくくても、剣道の教本に必ず目を通す。

壁際に立てかけてある竹刀の素振りを欠かさない。


それほど努力しても

悲しいかな高齢者と言うものは

日に日に体力が少しずつ少しずつ

落ちていく・・・。

まさに「老化との時間戦い」を黙々と

一人でやっている。


 そんな広志を、自室の壁に貼ってある

「大きな大きなポスターの龍馬」が観ていてくれる。

その龍馬が、おじいちゃんになったような石丸先生75歳.

剣道歴55年 7段の先生が

広志に「日本剣道形」を

教えてくれるようになった。

もっと先だろうと思っていた憧れの形稽古が

思いの他、早く始まった。

木刀による二人稽古である。


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