第16話 熱中症

 次男の智志が電話で話していたように

夏場は、面の中が猛烈な熱を帯びる状態となった。


約1時間20分の稽古時間であるが

この道場では、途中で面をはずすことを

禁じられているらしい。

体育館は冷房設備がなく

まるでサウナの中に居るようだ。


長年の暗黙の了解というやつで

誰も面をはずさない。


面をはずして付け直したいと思っても

つい我慢してしまう。

最初にきちんと付けなさいと言うことなのだ。


小学生の時から剣道をやっていますという

40歳ぐらいの方とか、この道場では剣歴

何十年もの、つわものが集まっている。

5段6段者が多く、高齢の先生方は6段、7段である。


 水分の補給もご法度。稽古が済むと

皆、涼しい顔をして道場を出て行く。

身体から湯気が立っているのが、よくわかる。


一人北山さんと言う若者だけが

駐車場の自販機で、袴の立ち姿そのままで、がぶ飲みをしている。

 広志も平静を装って車を駐車場から出し

国道を走りながら、冷えたポカリを

がぶ飲みした。

そこでやっと人心地がつくのである。

身体は、ほぼ熱中症状態なのだ。


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