第4話 素振り

「ほんなら、ちょっと素振りでもやってみますか」

森先生の指示で素振りを開始。

「その竹刀は?」

「下の子の竹刀です。剣道をやってたらしくて」

「ほおーそうですか」

ポロシャツにゴルフのスラックスのおっさんが

体育館の隅で素振りをしている。


 森先生は、他の方々の稽古の輪に入り

帰ってきては、二言三言、振り方を

指示してくれて又、居なくなる。

勝手に休むわけにもいかず

ひたすら素振りを続ける。


 面をつけたままの高橋先生がやって来た。

「益田さん そんなに無理せんと。気楽にやりまい」

「齢いってからの剣道は、気楽に気長にやらんと続かんで」

「親指をなもっと内側に入れてな」

「まあ しっかりやりまい ワッハッハ」

何となく愉快な先生ではある。


汗がジワーッと滲み出してきて

そのうち身体がカーッと燃えて来た。

久しぶりの感覚である。





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