菌ターネット
あなたは世界最大の生物を知っていますか?
ゾウ?クジラ?
いえいえ、じつはそれは、きのこなのです。キシメジ科のきのこ、オニナラタケがそれです。
アメリカのオレゴン州で、地中に伸びるこのきのこの菌糸を調査したところ、約2200エーカー、メートルに換算すると約8.9平方キロメートルにも及んだといいます。
これは、そんなとてつもなく大きなきのこのお話です。
マタンゴ王国には、ドクター・マツタケという博士がいました。この国の発明は、みんな彼の手によるものです。
彼はいま、あるきのこの研究に夢中になっていました。それは、オニナラタケ。世界最大のきのこです。
彼は、このきのこの菌糸を利用して、世界中の国どうしで情報の交換をできないかと考えていました。彼は毎日、研究室にこもって研究をつづけました。
そして、とうとう、このきのこの菌糸を利用した情報ネットワークを完成させました。
彼はこのネットワークに菌ターネットと名付けました。
菌ターネットは、またたくまに世界中に広まりました。
いま、菌ターネットの世界ではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)というものが大流行しています。このSNSを使うと、世界中の菌ターネットユーザーと、気軽にコミュニケーションをとることができるのです。
そこには、植物の観察日記をつける者、自分で考えた料理のレシピをのせる者、恋人を募集する者……さまざまなユーザーがいました。
そして、ここにも。
「ふう。やっと完成したぞ」
童話作家である彼は、いま一つのお話を書き終えました。
彼はさっそく、その『菌ターネット』というちょっと変わったお話をSNSに投稿しました。
『菌ターネット』は、まるで胞子のごとく広がっていき、彼は世界一有名な童話作家になりました。
(おしまい)
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