ピヨピヨ王国の災難

 あるところに、ピヨピヨ王国という、鳥の国がありました。

 この国には、アルバトロス十三世という、アホウドリの王様がいました。

 この王様、立派な功績を残した先代にくらべて、ひとつ、いや、ふたつもみっつも抜けているのです。国民のなかには《アホの王様》などと呼ぶ者もいます。

 これは、そんな王様のお話。


「おい、またアホの王様がアホなことを考えたぞ」

 ある日こと。お城の前には、国中の鳥たちが集まっていました。その前には、立て札が立っていました。

『明朝より、バードケージ要塞のトリこわし工事を行う。国民はみんな手伝うように』

 ピヨピヨ王国は、隣にあるマタタビ王国という猫の国によって、たびたび侵略されてきました。――もっとも、猫たちは、ただじゃれているだけなのですが。

 そのため、ピヨピヨ王国のまわりには、バードケージ要塞というがんじょうな要塞がありました。しかし、マタタビ王国の猫たちは、この要塞をいともかんたんに破ってしまうのです。そして、そのたびに莫大な修繕費がかかっていました。

「どうせ破られてしまうのだから、はじめから取っ払ってしまおう」

 それが王様の考えでした。

「そんなことをしたら、マタタビ王国の猫たちにされるがままじゃないか」

「しかたないさ、王様が言ってるんだ」

 鳥たちは呆れ顔で帰っていきました。


 次の日。

 王国の外には、スコップ、要塞を爆破するためのかやく、がれきを運ぶための手押し車が集められました。

「あまり気乗りしないが……始めるか」

 そのとき。

「マタタビ王国の猫が攻めてきたぞお!」

 見張り塔から叫ぶ声がしました。鳥たちはいっせいに要塞に逃げ込みました。

 要塞の外では、たくさんの猫たちが、要塞を破ろうと、がりがりと爪を立てています。鳥たちは可哀想に、要塞のなかでぶるぶると震えています。

 そのときです。要塞の外でものすごい音がしました。

 そうです。火を付けたままのかやくが、いっせいに爆発したのです。

 ――猫がなによりも怖がるもの。それは、突然鳴らされる大きな音。驚いた猫たちは、いっせいに逃げていきました。

 それからというもの、猫たちは二度と王国に攻めてくることはありませんでした。

 そして、だれひとりとして、王様をアホの王様と呼ぶ者はいなくなりました。

(おしまい)

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