第4話 知らない
俺の弟は、俺とは違って頭の良いクールな奴だ。
いつもいつも冷静に分析して、自分や俺にとっての最善策をいつも提示してくれる。
察しも良いし、鋭いけど何処か不器用で。
双子の弟として、家族として、本当に大好きで。
だけど、何か最近は考え事ばかりで。
元々そんなに饒舌な方ではないが、いつもより更に寡黙になっているような気がする。
俺は頼りない兄だな、と、こういう時によく実感する。
彼奴が俺に相談したことなんて、今まで殆どない。
確かに俺は馬鹿だけど、――。
「ねいと~?」
「ね~い~と~??」
理英、理央。二人の幼い声で我に返った。
「どうしたの?」
「大丈夫~?」
こてん、と首を傾げては愛らしい風貌で此方を見つめる二人。
彼らは俺の弟ではないが、実をいうところ今は本当の弟より可愛かったり……
こんなこと言ったら、笑也は出ていくかもな。
「ねぇねぇ、まえまわりやって~!!」
「あ、ずるい!!おれもやって~!」
「よしよし、順番なー」
笑也には兄貴らしいことを何も特にしてやれていないから…だろうか。
何故か、冷たい言い方をすれば他人であるこの二人に対する待遇の方が良くしてしまっている、気がする。
「ほら、理英、理央、昼ご飯。」
笑也の低くて若干重たい声が、襖の開く音の直後に聞こえてきた。
「「は~い!!」」
二人は とてて、と居間へ走っていく。
「ちゃんと手ェ洗えよー」
へら、と笑ってこう言うのは既に習慣と化している。
散らかった本をとりあえず重ねて端へ置けば、
「兄さんも、早く。」
振り向き様にそう零すように呟いては、台所へと戻っていった。
慌ててダイニングへと行けば、並べられた食器。
お店みたい、なんてお世辞めいたことは言えないが、家庭の味って感じで凄く暖かみを感じる。
…愁くんは、寝てるのか。
ということは笑也がこれを…?
「…何」
「ああいや、別に。
今日も、旨そうだな。」
「何急に…」
不意に褒めれば仄かに頬を赤く染めて。
褒められ慣れていない所為か、照れ屋の弟は…それでも確実に、父さんのような頼り甲斐のある大人に近づいていた。
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