第8話 淋しかった?
だいぶん酔ってきたのか?
彼は握った手を離さない
普段なら私が握ろうとすると
照れて直ぐに離すのに・・・少し嬉しい
自然にそこにある物のように
私は手を動かさないようにしていた
もし少しでも動くと
彼は照れて手を離してしまう気がしたから
この幸せが長くあることを願った
「俺は父親との約束通り大学を卒業し国家資格もストレートで通った
そして
インターン終了後
『人助け』というキレイな言葉を借りて途上国の難民キャンプへ行くことを志願した
実際は日本に居ると暗い日々を思い出すし
家族との距離感や変わらない失望の視線から逃げ出したかった
ただそれだけだった
がむしゃらに働いたよ
時間の感覚も忘れてしまうほど仕事に没頭したときもあった
朝なのか夜なのか今日なのか昨日なのか分からなくなるときもあった
充実していたし
沢山のことを学んだよ
だけど
たまにある休憩や休暇に思い出すことが多くなっていた
別れた子供のことを・・・
たぶんあの国の人たちに変えられたんだろうな
お金も余裕もないのに
自分が生きるだけでも一生懸命なのに
子供をしっかり抱きしめているんだ
絶対に手放さない
生きてほしいって願うんだ
あの頃の俺は逃げた
現実やあの子から・・・
そう言われている様だった
俺なんかよりもずっとずっと苦しい境遇の人たちなのに
俺よりもしっかり生きている彼らを見ていると
考えささられずには居られなかったよ」彼
彼はまた苦しそうな表情になった
私は彼の横顔を見ていたけど彼は私の方を見ないようにしているようだった
「そんな生活を3年続け日本に帰国した
そして今の大学病院に入った
そして今に至る・・・
俺どうして昔話ししてるんだろうな・・・
お前にずっと言ってなかったからな・・・付き合い長いのに
いうきっかけがなくて・・・」彼
彼はやっと緩やかな表情になった
「っで?娘さんとは・・・?」
「日本に帰って直ぐに彼女の実家に行った
『復縁させてほしいとかではなくてただ会わせてほしい』
って言いに・・・
そしたら・・・再婚したってさ
俺と別れて直ぐ彼女の父親が持ってきた見合い相手と・・・
商社勤務
年齢は一回り上で初婚なのに
とてもいい人で子供のことも受け入れてくれたらしい
娘は本当の父親のように慕っている
だから・・・会ってもらうわけには行かない
といわれた
正直、驚いた
てっきり親元で暮らしているとおもっていたから
まさか再婚してるなんて・・・」彼
「淋しかった?」
彼は苦笑いを浮かべて首を横に振った
私はそれが悲しく見えた
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