第7話 彼の手のぬくもり
彼は一度トイレに立ち
少しの間帰ってこなかった
席に戻るとすっきりした表情になっていた
顔を洗ってきたのかな?
少し前髪が濡れていた
「赤ん坊と彼女が居なくなった翌日
彼女の実家に呼び出された
俺は朝早くから目が覚めていたが昼過ぎに彼女の実家に行った
客間に通されて
そこには彼女の父親が待っていた
「昨日、娘が赤ん坊を連れて戻ってきた
疲れ果てて目の下にはクマができていた
この家を出て行ったときとまるで別人の様な険しい顔で・・・
もうキミのもとに帰るつもりは無い
だから赤ん坊と一緒に家に帰らせてください
と地面に頭をつけて頼まれたよ」父親
彼女の父親は以前に会った時よりは優しい口調で話していたが
俺は目を見ることもできなかった
そして俺は彼女の両親に深く頭を下げて
彼女と赤ん坊を宜しくお願いします
と告げた・・・
それから数日後
彼女の実家から離婚届が届いた・・・
同時に今後一切娘と孫には近づかないように
それを条件に慰謝料や養育費を無いものとする文章が届いた
俺は書き込んで直ぐに送り返した
その瞬間
心のそこからホッとした
大きな荷物をおろした様な軽い気持ちになった
そしてその足で自分の親にこのいきさつを話し許しを得て
大学生に戻った
親からの信用は全くなくなって
一つも単位を落とさずに大学を卒業すること
国家試験を一回で習得すること
実家から大学へ通うこと
外泊はしないこと
それを条件に許してもらったんだ
軽蔑されながらまるで囚人のように監視されていたが
それまでの未来も見えない暗く憤りを溜め込んでいた日々よりはましに見えた」彼
彼は空いたグラスの中に残る氷をクルクルと回しながらそれを見つめた
私は同じものを二つ注文し一つは彼に手渡した
彼はそれを一口飲んで私に少し微笑んだ
そして直ぐにグラスを持ち替え私の手をそっと握った
そして話がまた始まった
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