フィフティーンコスモコスモファンファーレ
20歳じゃないか。
気づくと、意識の、闇のなか。
両手から、ゆっくりとゆらり、ゆらり無重力に漂う、赤。振り袖のいろが、よく、映える。
気づくと私は成人式の、振り袖姿。
「はなちゃん、べっぴんになったね」
「はなちゃん、ほら合法的なビール」
「はなちゃんも、大人の仲間入りだね」
「はなも、大きくなったねぇ」
「佐藤さんのとこの子も、もうすぐ花嫁さんだね」
「はなちゃんも、お酒を飲めるのねぇ」
「成人、おめでとう」
「おめでとう!」
やみの彼方から響く、祝福のファンファーレ。
様々な優しい、誰かの声が、暗いなか空気震わせ聞こえて、ああそうか自分はもう20歳を越えたんだということを思い出し、
「でもやめて私は中身は15のままなの」
ぼんやりと言葉が口から漏れる。
「そんなわけないわ」
誰かの声が否定する。
少女の声。
「だってあなたは順調に年とったもん」
鼻にかかる、アルトは、闇に混ざる。
「だからちゃんと23歳のはずなのよ」
ふんすと鼻を鳴らす、音。
この声の主を、私は知っている。
「だからいい加減、精神年齢と実質年齢に戸惑っている幼稚さを、棄てろよ」
15の、自分の声。
でもね、でもね。
私は心の中で反対意見を唱える。
「しね」という言葉が離れないの。母はしっかり育ててくれたわ。だけどその言葉が離れないの。
「その不幸せが君を縛るなら、君は他は幸せであったという証拠だよ」
1の不幸せの背景には、1000の幸せがある。
だから君は不幸せと思われる事象を「不幸」と思うんだよ。
目を開くと、実家のリビングにいた。
テレビもテーブルもリモコンもすべてが元通りになっている。
振り袖姿のまま、立ち尽くす。
反抗期だの痛い記憶を「痛い」と思うのは、私が幸せだったという揺るがない、揺るがない、証拠、しょうこ、しょうコスモ。
無意識にそれを認識しているイコール年をしっかり重ねてる、数式成り立つ、ような気がする。
「ゆめはまだ、終わらないよ」
少女の声。
いや、私の声がどこかに、ぽろぽろ落ちた。
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