スターライトシーソー
夜には満点の星が浮かんでいる。
幾つかは流れて何処かに消えていく。
あの、星は、誰かの願いを乗せているのだろうか。
「バランスを取るのが難しいね」
「そうですね」
ギーーッコン。蹴る。ギーーーイ、ッコン。蹴る。
ギッコンバッコンと軽快に進むほど、シーソーは案外単純ではない。ましてや木製のボロボロシーソーならなおさらだ。
「楽しいね」
先輩が笑うので、
「楽しいですね」
と相づちをうちながら、座る場所をちょこちょこ直す。ついでに巻いている白いマフラーとカーディガンの衿も。
ギーイッ、上に上がる。夜に近づく。
「先輩は、シーソー好きなんですかぁ?」
わざと少しトーンをあげて張った声は、冷たい空気にかんかんに響く。
「うん、好きだよ。」
にこりとした微笑みは、制服のブレザーによく似合う。
ブレザーには微笑みがよく馴染む。特に、りょー先輩は。
ギーーイッ!夜が遠ざかる。
「佐藤は?」
先輩に不意に聞かれる。
「シーソーより先輩の方がすきです」という言葉は、呑みこみ
「私も好きですね」
適度に笑う。
ギーーイッ。再び光る星々に近づく。
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