タイガーポイズンハニーハニー
「あの女より私がセンパイのこと好きだった」
美優の大きな瞳からは、透明な分泌液がごろり、と落ちる。
トラの毛並みにその透明液体がかかり、私は彼女の顔に怪訝に視線をあげる。
ーーああ知ってる。このあと彼女は。
「ねぇはなきいてよ。私の方がね、ずっとねずっとねずっとね好きだったんだよ、センパイのこと。ゴロン。でもねあの女はそのことを知りながらも付き合ったんだよ、センパイと。これてとても残虐で酷いことだゴロンゴロン。と思う。ねぇはなはどう思うのゴロン。」
私は彼女の口からでてくるビー玉に、目を奪われる。
「私はいままで彼氏がいたことなくてずっとずっと処女でかわいそうなのにゴロンゴロン。なのになんで選ばれないの。はなよりメイクも頑張ってるはなより服もおしゃれだわはなよりゴロンゴロンゴロン。楽器だってうまいわ。私の学年では2番目くらいに値する女だと思うのねぇでもセンパイは振り返ってくれないの!あの女の方に行くの、でもあの女より私の方が可愛いじゃないゴロンゴロンゴロン。向こうはせいぜい中の上じゃない私は上の下じゃない私は純潔じゃないねえドウシテドウシテなのよゴロン。」
ビー玉は落ち続ける。唖然とするけどああこれは夢だ夢なんだ。
「はな・・・どうしよう。ゴロン。」
最後のビー玉を吐き出して彼女は汚い部室の床にへたりこむ。
顔を覗くと瞳の焦点があってない。暗いカラーコンタクトは視線がどこかわからない。
かわいそうに。かわいそう。
私はそっと声に出す。そう、かわいそう。
酷いよね。酷い。
だから私が話を聞いてあげる。聞いてあげるよ。
「ほんとうはそうおもってないくせに」
不意なボーイソプラノ。
「起きていたの」
トラは、目を覚まし気づくと4本足で立っている。
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