タイガーポイズンハニーハニーハニー

トラは、4つ足で立ち、冴えた瞳で私を捉える。

「そうやって、話を聞いてあげる自分を演じることが最大の君の自己肯定だった」

捉えて、離さない。

「君は彼女のことなんて半分どうでも良かったはずなんだ」

私は彼女のビー玉がハチミツの飴玉に変化することを認識する。琥珀色の甘い甘い透明な飴玉。

「逃げようとしたってむだだよ」

蜂蜜は甘い。ならば琥珀の飴玉も甘い筈。

「君が彼女の親友としていたのは、彼女のことを好きだったからじゃない。ましてや彼女の知からになりたいからとかじゃない。」

飴玉は甘い。絶対糖度は1000を越えるだろうああ。


「彼女の側にいれば【友達の悩みを真摯に聞く私】として君が居続けることが出来たからだよ」


ガリッガリッガリッガリガリッ!!!!

飴をかじる。

口のなかにいれると途端にハチミツの姿へと戻りぬっとりと風味が口内に広がり幸福が全身の毛穴を塗り込める。

もう一粒。

もう、一粒。


ガリッガリッガリッ!!!


そうだ。私は鬱病の美優が嫌いだった。

でも彼女がもたらす自己肯定は至上に甘かった。

それほどに【鬱病の話を聞く私】は尊かった。

他人の不幸は、なんとやら。


ガリガリガリガリガリィッ!

ハッピーハッピーハニーハニー!!!


「君はもういらない」と、トラが美優を食べるのが視界の隅に見えた。意外と彼女はもがき苦しんで、最後はヒールのはいた足が大量の血液と共にごくりと飲まれるが見えた。


知るか、あんな女。

りょー先輩のこと、お前よりとっくの前に私だって、好きだったんだぞ。


ガリガリ!飴玉はなくならない。

床に落ちた飴玉を、私はいつまでもいつまでも拾って拾ってかじり続けた。


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