初めてのデート ④ 【スピンオフ】
「どうせ同じなら権限があった方が楽だな?」
「はい。」
「両者が勝手に読み書きできたらグチャグチャになるかもしれない。」
「話してから決めればいいんですよ。1にしたい訳でしょう?1かどうかも1にしといて話してもいいんじゃないですか?設計者に拘りがなければ、別の人に権限与えるとか……。」
「権限取り上げるとかな。でも、その設計者、物凄く強くて、そこに触れると最悪、裁判になる。俺はそこまで見えた。1だって言わせる方が安いし早い。そこを頑張って戦う意義あると思う?」
「意味がわかりませんね。」
「お前、窓口。設計者が折れないから、うちはまだ答えを出せませんって言わなくちゃいけない。どこの国でもそれはおおよそ1だから1としてるのに、どんな問い合わせにも、全てを敵に回しても、わからないと説明しなきゃいけない仕事、やってられる?」
「しんどいですね。」
「1にするために1にしてって言うしなかい。そうだな、そう見える。受信機は壊れてない。お前、正しい。下手に正しいから俺も時々こんがらがる。ぐだぐだ言いながら、設計者もおおよそ1として計算してたらどう思う?」
アリスは困惑気味に笑いながら言う。
「1でいいと思いますけど、拘りたいなら飛ばしますね。というか、もう止めた方がいいです。」
「そう!俺、やめちゃった。どうでもいいんだもん。でも、時々権限に関わる問い合わせが来る。うちは自由を与えるために権限を与えないんですって説明出来る?」
「成立しません。矛盾してますね。」
「話を戻す。女性は結婚しようがしまいが子供が生まれれば絶対母親だ。自動的に紐付けされる立場で、最初から権限を持つ。何も変わりはしないよ?どうあっても誰にも何も言わせない。けど、どうせ同じなら、権限がある方が自由になれると思わない?」
「……!凄い!ルカ頭いい!!」
アリスは驚きの余り口を手で覆い、ルカを指差した。ルカは脱力感に襲われたが、言い様の無い憤りもわいてきた。
「バカ!お前、バカ!本当、バカ!本当に使えねぇ頭してんな!入籍に家庭裁判所まで行かなきゃいけなくなった!そのバカに付き合って、こっちは煮え湯飲まされて……っ!!ああ、もう、それはどうでもいいや。」
ルカは沸き上がった全てを振り切って、アリスを抱き締めた。
「俺、もう一人、子供欲しいんだけど……。」
「……それは、新卒で就職したいなら進学しろって解釈でいいんですか?」
「……その手があったか。」
ルカは舌打ちした。
「チッって何ですか、チッって。」
「そん時はまた言うわ。」
ルカがまた歩き出すと、アリスはルカの前に回り込み、ルカの足を止めた。
「私、私が一番好きって言ってくれる人と結婚したいです。」
少女のように微笑むアリスに、苦いものを噛んだような顔をしたルカは、喉まで出かかった言葉を飲み込み、やけっぱちになって棒読みした。
「好きです。結婚してください。」
「……何か、思ってたのと違う……。」
不満そうな顔をしたアリスに、ルカも不満をぶつけた。
「そりゃそうだよ!何回言ったと思ってんだ!そうだと思うもの全部挙げてみろよ!そういうのは得意だろ!?」
本当に数え始めたアリスに呆れながら、ルカはアリスの唇に口づけた。
「好き。大好き。世界で一番、愛してる。」
ルカはアリスの額に口づけて、アリスをきつく抱き締めた。
「何のお役にも立てませんが……。」
「本当、役に立たない!ただのバカな女だ!」
「ひっど!!」
「俺もバカだから、丁度いいだろ?」
二人は笑い合いながら、唇を重ねあった。
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