my fair lady ④ 【スピンオフ】


「いいよ、出ない。自力で帰れる。」


「ミキちゃんっていつもの彼でしょ?お得意様の電話は切れないよ。」


 卯月グループ長が表示を見てケータイを取り、スピーカボタンを押して電話に出た。


「有機の卯月ですー。毎度どうも。」


「いつもどうも、霜月です。すいません、うちの嫁、暴れてませんか?」


「ウチの奥さん?大人しくなったよ。」


「今から出ますんで、30分くらいで着くと思います。」


「うん。今日、帰れない人、二人いるんだ。二人で運転代行やろうか?」


「お付き合いします。いつもお世話になってるんで。」


「ゆっくり来てね。」


「どうも。」


 卯月グループ長がルカにケータイを返した。


「あの二人、自分で何とかしてきた同士だから、お互い、甘えるとか頼るって事、知らなさすぎんですよねーって、どっかの誰かが言ってたよ。」


 神無月所長はそう言いながらグラスを空けると、注がれる前にグラスをひっくり返して、手のひらを見せた。


「そいつに免じて、今日のところはこれで勘弁してやるよ。」


 残り3分の1になった一升瓶に栓をしながらルカが言った。


 卯月グループ長が心配してルカに聞いた。


「お嫁さんに電話しなくていいの?」


「ミキにメッセージが飛んだって事は、嫁にも飛んでるって事だから、いいです。」


「そんな事まで出来んの?すげぇな、俺も買おうかな。」


 興味を示して自分のケータイで調べだした嘉月にルカが答えた。


「出来ること増えていくんだ。自分で成長するから。SNS使ったりハンズフリーフォンにもなるし、事件、事故で通報した事例がある。スピーカーが付いてて音楽流せるから明らかに喋れるけど、飼い主に直接喋ってきた事例はまだない。


嫌われると意味の無いデータを何重にも上書きして中身が空っぽになる。二度と帰ってこないし、何で壊れたか証拠が送信されるから返金にも応じてもらえない。」


「車一台分かぁ……。これ、セレブの間で凄い人気なんでしょ?作った人、凄いよなぁ。」


「……嫁さん。最初はどうなるかと思ったけど……凄い人だよ、本当に。」


「「「マジで!?」」」


 その場にいた全員が驚いた。




「あーあ、俺、誰にも勝てない。何やってんだろ、俺。」



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