初めてのアルバイト 【スピンオフ】


「ただいま帰りました。」


「お帰り。」


 ルカは子供の寝室を見に行って出てきたアリスを捕まえて聞いた。


「どこ行ってたの?」


「えっと……結局、4ヶ所くらい回って……色んな所にいきました。」


「何しに?」


「お仕事です。私、アルバイト始めました。」


 アリスは笑顔だった。


「どんな仕事?」


「単発で急に来るんです。現地集合、現地解散です。」


「何するの?」


「言えません。でも、2ヶ月経たないうちにわかりますから、それまで待ってもらえますか?」


「何で言えないの?」


「そういう決まりなんです。家族にも誰にも言っちゃダメだって。書類書かされました。」


「守秘義務?」


「そうです。どこから漏れるか解らないからだそうです。初めてでしたけど、みんな優しい方ばかりで安心しました。明日はまた別の方とお会いするそうですが。今日はもう遅いのでお風呂入って寝ますね。」


 すれ違いざま、首の後ろのリボンに髪の毛を巻き込んでいるのが見えた。


「ちょっと待って。」


「はい?」


 ルカが力ずくでベッドに押し倒してアリスを脱がせようとすると、全力で抵抗された。


「待って!明日も仕事があるの!」


「どこで脱いだ?どんな仕事だよ?」


「……言えません。」


「単発で急に決まって出張して知らない人の前で脱ぐ仕事?お前、頭わいてんのか?」


「わいてません。離してください。」


「答えなくてもいいよ。体に聞いてみようか?」


「今日は危ないからダメです。」


「へぇ、そりゃ2ヶ月後が楽しみだね。」


 ルカはアリスの上着をあげて胸元に口をつけた。


「ちょっと、やめて!本当に困るの!!」


「誰が困るんだよ!?見えるところにはつけねぇよ。後ろめたいことがないなら、堂々と行ってこいよ!」




 その日を境に、二人の会話はなくなった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る