インセンティブ② 【スピンオフ】
「誰だ、こういう事を書いたバカは。」
「僕じゃありません。」
「素直に言え。」
「……水無月です。」
「水無月君?初月で120万引っ張ってきたっていう技術の彼?何が欲しいって?ちょっと見せて。」
「支社長が見るような内容じゃないですよ。」
「いいから、見せて。」
支社長は渋々差し出された書類を読んで答えた。
「……ふん。いいんじゃない?僕が通そうか?通らないかな?これ、僕が貰うよ。僕が払うから、君、ケーズデンキで買ってきてくれない?」
怒りも笑いもせず、使いを頼む意外な反応に所長はうろたえた。
「えっ……これを?全部?……本気ですか?」
「まずいかな?いいよ、じゃあ、僕が買ってくる。」
「いえいえ、私が行きます。すぐ買ってきます。」
「これでどれくらい向上するのか見せてもらおうじゃないか。新規開拓でもやってもらおうかな。」
事務所の営業たちから失笑が漏れると、支社長は営業に向かって言った。
「笑い事じゃないよ。技術を遊ばせているのは君たちだよ。彼、どこ行ってると思う?大学だよ。苦戦してる学生に声かけて仕事引っ張ってきてるんだよ。」
「女子大生漁りに入り浸ってるだけじゃないですか?」
営業の口答えに支社長の目つきが変わった。
「悪評立てる暇があったら君たちも動いたらどうかな?若い頃に助けてもらった縁で就職後も仕事が回ってくる人脈作ろうとしてるし、彼、学生が行く先の研究所から国家予算引っ張ってきてるんだよ。君たち取ってきてるの殆ど固定物件ばかりじゃないか。
新規1000万で20項目カバーしますとか言い出したらどうする?彼、言いかねないと思うよ。そうやって僕たち飯食ってるんだよ。技術のケツ叩かなきゃいけなくなる程の案件取ってきてから言ったら?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます