鏡の国のアリス ⑳胎動


「そうだ、あいつ、計画は譲渡するって言ったけど、権利の全てを放棄するとは言ってない。」


 ミキはネットで検索して言った。


「参考だけど、今あるセラピーロボットが45万円だから、使用料10パーセントなら一台当たり4万5千円が入る事になる。ギミックも精査して利権に関係する部分が見つかれば何とかなるかも……。」


「名前決めてもらえばいいのかしら?」


「そんなもんは出したもん勝ちだ!適当に出しちまえ!名前決めていいって言われたんだろ?」


 図面を引っ張り出したミキにアリスが言った。


「面倒だわ、弁理士を呼んで!」


「そんな金!……あるのか。」


 ミキが我にかえって思い出した。


「あるわ。私が依頼人になればいいんでしょ?」






 12月9日 金曜日


 ケータイで外装の完成報告を開いているところを、アリスが覗きこんだ。


「可愛い。なんて猫?」


 ルカは慌てて画面を閉じて言った。


「動物は飼えないよ。ペット不可じゃないけど、敷金3倍払う羽目になる。」


「払えばいいの?」


「動物は無理だよ。今はうちにいるからいいけど、アリスだって通学するようになったら面倒みれないでしょ?」


にゃんこ・・・・、可愛い。」


「可愛く言ってもダメなもんはダメ。」


「ケチ。」


「ケチじゃない。それより、ベッドもう一台買おうと思うんだけど。同じやつ並べればダブルより広くなるし、しばらく寝たまま生活出来るようにしとかないと……。」


 話を聞く素振りを見せたアリスの表現がふと曇り、動きが止まった。


「どうした?」


「……ちょっと待って……あれ?気のせい……?」


「何?」


「何か、ポコって……あ、ポコって!動いた!」


「本当!?」


 二人で下腹部に手を当ててみた。


「まだ凄く弱くて外からじゃわからないかも。なんか、ちょっとオシッコ行きたい感じ。」


「そうなんだ。膀胱の近くったら、この辺かな。」


 二人は喜び、笑いあった。ルカは、


「ありがと。」


 と言って、アリスに口づけた。アリスは照れながら、


「今日は一緒にお布団……入ったりしない?」


 とルカを誘った。


「全然!……嫌じゃないなら、全然いいけど……。」


「あ、でも……優しくしてね。」


「うん。お腹がびっくりしないようにね。」




 二人は甘く口づけ合いながら、電気を消した。



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