鏡の国のアリス ④予感


「レジナルド・ハーグリーブス……。」


 ヘンリーは頭を抱えながら、いつかのエントリーシートと個人情報を眺めていた。


「彼の返答はまだ返ってこないのか?」


 首を横に振る女性の様子を見て、ヘンリーは焦っていた。






「ごちそうさまでした。」


 帰り支度をして手を合わせると、ミキが席をたった。


「ちょっと轢かれたら酔い覚めるんじゃね?」


「お義父さんがそういうなら、そうします。」


「何てこと言うのよ!」


 二人が見送りに立つとミキがルカに言った。


「まさか、行く気じゃないよね?相手にすんなよ。」


「……考えとく。」


 ルカは首の後ろを掻きながら答えた。


「じゃあね、また遊びにいこうね。」


 ミキとアリスは互いに頬にキスをして手を振り合った。


「お気を付けて。」


 アリスがそう言うと、ミキは玄関を閉めて、バス停へと急いだ。






 アリスが食器の片付けをしている横で、ルカはリキュールを作った。


「今日はありがとね。」


 ルカの言葉に微笑みながらアリスは答えた。


「あんなものでよければ、いくらでも。」


「……少しは食べられた?」


「パンが焼ける香ばしい匂いと、肉類の甘味はまだ苦手ですけど、冷たい魚とパスタは平気みたいです。あとは、レタスとポテトですかね。食べ過ぎると甘味で戻してしまうんですけど、不思議とフライドポテトは食べたくなるの。」


「ふーん。」


 ルカはアリスを眺めながらグラスを空けるとアリスの後ろに立ち、首の後ろに口づけながら、太腿から腰に向かって手を這わせるようにスカートをたくしあげた。アリスは小さな悲鳴をあげながらシンクに手をついた。手から滑り落ちた皿が桶の水の中に落ちて、小さな水しぶきがあがった。


「危ないじゃないですか。」


 と振り向いたアリスの口を唇で塞ぐと、アリスのシャツのボタンを外しながらルカが言った。




「お前のせいだよ。」



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