第15話

 それっきり馬場先輩の件には関わらないつもりだったのだが、俺が否が応にも関わる羽目になったのは、梅村のお見舞いに行ってから三日後のことだった。

 俺はこれまでと基本的に変わらず誰とも話さずに、土曜日と日曜日を過ごしていた――ただ一人の例外、刀条を除いては。

 土曜日、刀条は授業中や休み時間に、俺にちょくちょく話しかけてきた。大した話はしていなかったけど、同級生との久方ぶりの会話に心弾ませるものがあったことは事実だ。

 やっぱり、俺は友達が欲しいのだろうか?

 梅村とは、お見舞いの後、一度も話さなかった。刀条とは時々話すようになっているのに、梅村とは話さないのは性格の違いであるのだろう。まあ、単純に席が遠いというのもあるけれど。

 梅村とは話さなかったけど、ちょくちょく様子を見ていた。二日間のうち、一日は日曜日だったから、その日のことはわからなかったけど、土曜日も月曜日の朝も新しく傷は増えていなかった。だから俺はちょっと安堵していた――油断していた。馬場先輩も更生したのかと都合よく考えていた。

 けれど、その考えはどこまでも自分勝手なものに過ぎなかった。

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