第9話
刀条の姿が見えなくなると灰島が口を開いた。
「ひさなちゃん、いい子そうじゃないか。あの子なら西寺君の友達になれるかもね」
「……どうだか。仮に友達になったとしても俺の正体を知ったら悲鳴を上げて逃げ出すに決まってるよ」
「君の言うことは正しいかもしれないけど、もう少し可能性っていうのを考えるのもアリなんじゃないか?怪異である君を受け入れる人間だっているはずだろう?」
「……。受け入れられても意味がないんだよ」
「そんなこと言うなよ……」
「俺は年を取らない。相手だけが年を取っていくんだろ?そんなことはごめんだよ。仲の良かった人たちが次々と死んでゆくなかで俺一人がこれから先何百年も生き続けなきゃいけないなんて俺自身が耐えられない。俺には灰島だけがいればいいよ。はっ、なんだか愛の告白みたいになっちゃったな」
それっきり俺も灰島も口を噤んだ。
まるで触れてはいけない問題に触れてしまったかのように。
その後、俺たちはパトロールを続け、家に帰ったのは二十二時を過ぎた頃だった。
昨日の夜作ったロールキャベツをレンジで温めて食べ、ベットに入った。
天井を見上げる俺の頭に、体育館で僕に助けを求めていたクラスメイトの顔が浮かんでは消えた。たすけて、と頭の中の彼は何度も叫んでいた。
――ごめん、俺は面倒事なんてごめんなんだ。
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