一章
第4話 食べ物>命の恩人
夢を見た。
遠い世界の夢を。
その世界で僕はずっと一人だった。周りの人はみんな異形の生物に見えた。だから、僕は…
ーーー
「…ん。あれ…ここは…」
いつの間にか気を失っていたらしい僕は目が覚めると見知らぬ場所にいた。
まず目に入ったのは木製の天井だ。キャンプ場のロッジなんかのように整っているわけではなく、ところどころに隙間が見え、緑が見える。
起き上がり、周りを見渡す。自分が寝ていたであろうベッド以外には木製のテーブルと椅子くらいしかない。そこに僕のバッグも置いてあった。
「!!これは…」
そしてテーブルには木製の皿に色とりどりの果物が積まれていた。
林檎や葡萄、バナナやいちごとよりどりみどりだ。
「…食べていいのかな?」
思えばかなりお腹がすいている。最後に食べたのはいつだろう。最後に水を飲んだのは…
林檎を手に取り、そのままかじる。
しゃり、しゃり…とれたてなのか新鮮な食感。口いっぱい、体中にひさしぶりの食べ物がいきわたる。忘れかけていた甘いという味。歯ごたえのある食感。こんなにおいしい林檎を食べたのは初めてだ。記憶にあるどの林檎よりも格段においしい。いまならアダムとイヴが禁断の果実を食べた気持ちが代弁できそうだ。
「起きた?よかった…ってどうしたの!?なんで泣いてるの!?」
感動しながら林檎を食べていると、どうやら涙が出てきていたらしい。
そして、いつのまにやら女の人が扉から入ってきていた。
「この林檎がすっごくおいしくて…思わず泣いていたんです」
「そ、そう…よかったら他のも食べていいわよ?その皿に置いているのは全部あなたのよ」
若干引かれている気もするがいまはそんな些細なことに構っていられない。腹は、脳はもっと食べ物をよこせと言っている。
「色々とお礼が言いたいところですが、ひとまず失礼して先に食事をさせてもらいます。いただきます!!」
女の人の返答を待たずして、僕は次の果物に食らいついたのだった。
若干、というかかなり引いた彼女の顔は幸い気にならなかった。
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