第3話 歩き始めて三日。食料が尽きそうです


この草原にやってきて三日が立った。この三日間歩き続けているが、町や村はおろか人にも動物の姿すら確認できない。


「そろそろ食料が無くなりそうだ…」


元々バッグに入っていたペットボトルのお茶も昨日すべて飲んでしまった。加えてバッグの中に入れていたお菓子も元々大した量も持っていない。今日中にはなくなってしまうだろう。


「異世界転移させるなら、もうちょっと場所を考えてほしかったな…」


ぼやいてみるも返事はない。周りに人がいないのだ。当たり前だ。

…黙って歩いていると嫌でも、自分のことが気になってくる。

出身地や家、友人の名前は思い出すことができる。なのに、どうしても自分の名前だけはいまだに思い出すことができない。

いや、正確には名前に関することだ。例えば友人にどのように呼ばれていたかだったり家の表札の名前が思い出せないのだ。


「異世界転移にしても、なんで名前に関する記憶だけが思い出せなくなっているんだ?」


単純に考えてみるとそれが転移させた奴に都合が悪いのだろう。だけど、どうもそんな単純な話ではない気がする。


「考えても仕方ないか…いまはとにかく村…少なくとも人に合わないとどうにもならない…」


考えていても答えは出ない。それに目下最大の懸念はこのまま食料がなくなり、身動きが取れなくなることだ。それだけは避けたい。というよりこの状況が将棋でいうところの王手の状態なのだ。詰まされる前になんとか人に…




ーーー


「誰かー…助けてー…」


数日後、草原でぶっ倒れている男の姿があった。

というか僕だった。


そしてその2日後。

僕はようやく異世界にきて初めての人に出会うことになった。

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