第1.9話「石定の提案」
昼放課にはいった教室は弛緩とした空気に包まれていた。
ところどころで島を作る様に人が群れ、中の一人が話題を振る共に合わせる様に周りの人間もその話題に乗っかる。
自らがつまらない人間であることを悟られぬよう笑いをとり、また笑いを取られるといった典型的なリア充の性質が絵に描いたようにわかる今の状態。
私は机に突っ伏し狸寝入りを決め込みながら、この後の予定について考えていた。
この後世界史か・・・・そのあと数学だし、まあ寝てもいいかな。
教科書読めば大抵のことは書いてあるし。テストは大丈夫だろう。
と、そんなことを思っている最中。
寝ましたオーラ出しているつもりの私の元へ一人の少女が駆け寄り、後ろから声をかけた。
「長井くん!」
明るく元気な声で話しかけてきた少女はてくてくと私の机の前に移動し、前席の椅子を反転させてそこに座る。
昨日のような変な気配は一切無い石定亜貴の姿がそこにはあった。
石定は話しかけても一向に返事の帰ってこない屍状態の私の頭をツンツンと指で突く。
その度に「おーい」と呼びかけをしながら。
「・・・・何だ?」
観念した私はめんどくさそうな顔で石定を見る。
その瞬間石定は「あ、起きた」と小声を漏らした。
私は後頭部をかきかきしたあと、もう一度石定に「何か用か?」と尋ねる。
すると石定は「進展はどうですか?」とキラキラした目で私に問いてきた。
「は?進展?」
寝起きで若干不機嫌モードだった私は半ギレじみた声で疑問符を浮かべる。
すると石定は「なっ!」と言い、私の肩を掴んでゆらゆらと揺らしながら「昨日の高橋先生とのお話のあと!長井くんが私に任せろって言ったじゃん!」忘れたの?と最後に付け足して言った。
私は「昨日・・・・」と目をこすりながら昨日のことを思い出す。
時は高橋先生とのお話の後、私は石定の予想以上のリア充っぷりに呆れ、話の後教室に戻る途中で「後は私がやる」と確かに言っていた。
私はそのことを思い出し、頬杖をついて「ああ・・・・」と声を漏らす。
石定はそんな私に「それで進展はあった?」ともう一度問いてきた。
「進展・・・らしい進展は、今の所無い」
私は落ち着いた声でそう言った。
石定はがっかりしたのか「そう・・・」と漏らし顔をうつ向かせる。
私はそんな石定に少し気を利かせ「なあに、もう少しだから安心しろ」と、なにがもう少しなんだと言わざるを得ない言葉を送る。
すると石定は俯いた顔を上げ「・・・うん」と控えめな返事をした。
次いで石定は 「長井くん・・・」ともう一度私の苗字を呼ぶと、その表情を真剣なものに変え、「ん?」と気のない返事をした私に衝撃的な提案を持ちかけてきた。
「藤林さんに・・・・会ってみない?」
ーーはあ?
私は素頓狂な声で、その提案を素直に驚いた。
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