教会
第14話 小さな村のトイレ
異世界のトイレから――
今日は、ふらりと立ち寄った小さな村のご紹介です。
♪チャラッチャッチャッチャチャーララー
――――――――――――――――
提 供
カ ク ヨ ム
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♪チャーラー ラー
魔の森に立派なトイレが建って、数日後。
わたしは旅立ちの街に戻ろうと、田舎道を歩いていました。
近くにある、小さな村が見えてきます。
特に寄っていこうとも思わなかった私ですが、
つい立ち止まって、その村に目を奪われてしまいました。
美しい黄金の絨毯――美しく実った稲穂が一面に広がっていたからです。
今か今かと収穫を待つように、そよ風になびいて音を立てていました。
そういえば、もうすぐ収穫の時期でしたね。
トイレのことばかり考えていて忘れていました。
トイレは季節など関係なく、一日たりとも欠かせないもの。
休みなく働く社畜会社員が、つい曜日を忘れるのと同じような感覚でしょうか。
それにしても――
BGM ♬稲穂のタップダンス
今年は特に天候に恵まれたという年ではなかったはず。
それなのにこの、大豊作といってもいい実り方。
いったいどうしたというのでしょうか。
気になったわたしは、村へ寄ってみることにしました。
一面の稲穂の中を抜けて、点在する家屋の方へ。
あたたかな日差しと、ときおり聞こえる牛の鳴き声に、
わたしの心が安らいでいくのを感じます。
今まで魔の森にいたこともあるとは思いますが。
お。第一村人、発見です。
「おや、旅人さんかい? パラプス村へようこそ」
話しかけてくれたのは、中年の女性の方でした。
「いや……旅人さんにしては、おかしな格好をしてるねえ」
わたしはジャーナリスト。
他の冒険者みたいに武器や防具を持っていません。
そういった感想を持たれるのは、まったくおかしくないことですが。
「何、不思議な格好の旅人さん?」
「なんだいなんだい、どうしたんだい?」
「貧相だねえ。よくそんな身なりで旅ができるねえ。すごいねえ」
物珍しいのか、すぐにわらわらとおばちゃんたちが集まってきました。
その全員が、まさに健康そのものという、活力のある笑顔を浮かべています。
魔物がはびこるこの世界。閉鎖的になる村落も多いというのに。
この村は元気と明るさで満ち溢れていました。
「旅人さん、この村に来たならまずは教会に寄って行きな!」
「ここの教会はすごいんだよお。神様って本当にいるのよね」
「あたしたちが幸せに暮らせるのも、あの教会のおかげだもの」
「あとシスターちゃん。あたしあの子大好き!」
ほう、教会ですか……。
くそリンに祈りをささげるのも、いいかもしれませんね。
それにここまで絶賛されている理由も気になります。
――あの、よかったら教会に案内してもらえませんか?
おばちゃん方は、こころよく案内してくれました。
教会は村のほぼ中央の位置にあり、とても立派なたたずまいでした。
――すごいですね! 城下町にあるものと遜色ないですよ!
「そうだろそうだろ? でもね、すごいのは外見だけじゃないんだよ」
――シスターの方、ですか?
「そう、ぜひシスターちゃんには会ってほしいね!」
「それと、絶対に見逃せないものがあって、それはね……」
おばちゃんたちが見事に声をそろえて、こう言いました。
「「「――――トイレだよ!!」」」
え?
トイレ…………??
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