第12話 うちのウ○コ知りませんか?
異世界のトイレから――
今日は、魔の森で迷子のウ○コを探します。
♪チャラッチャッチャッチャチャーララー
――――――――――――――――
提 供
カ ク ヨ ム
――――――――――――――――
♪チャーラー ラー
――くそリン、くそリン! どこですか!?
私は至る所をかけずり回って、くそリンを探しました。
森の中は障害物でいっぱいです。
草をかき分け、落ちている葉っぱをどかし、木陰を探します。
それでも……見つかりません。
そのときのことでした。
「ビィィィィィィィィィィ――ンッ!!」
木陰を探したときに触れていた木から、大きい蜂が出現しました。
耳障りな羽音を鳴らして、こちらに飛んできます。
【 キラーホーネット が あらわれた! 】
BGM ♬うん、こどもが泣いている
――――あっ!
くそリンを探すのに夢中で、チートエンカウンターを使っていませんでした。
私のレベルはたった1。しかも武器防具はいっさいなし。
まともに戦ったら、勝てるはずがありません。
【 ジャーナリストは にげだした! 】
【 しかし まわりこまれてしまった! 】
くっ……。ど、どうする……!?
しかし、考える時間はありませんでした。
巨大蜂が私にむけて、尾の針を刺そうと突撃してきます。
【 キラーホーネットの こうげき! 】
【 ジャーナリストは ひらりと みをかわした! 】
蜂の攻撃が、体勢を崩した私の頬をかすめていきました。
あ、あぶねーっ!
さあ、今のうちにもう一度逃げないと!!
次のターンに移り、ふたたび私の行動が選択できるはずです。
ところが――次に出たメッセージウインドウは私を絶望させました。
【 キラーホーネットの こうげき! 】
ま、まさか……、このモンスター、2回攻撃なんですか!?
攻撃をかわすなんて幸運が、連続で起きるはずがありません。
蜂の針が、私の目の前に迫ってきます。
私は――――死を、覚悟しました。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン…………ドガッ!
【 くそリンの こうげき! 】
【 キラーホーネットに 31のダメージ! 】
…………え!?
どこからか飛んできたブーメランは、巨大蜂にぶつかりました。
蜂は体勢を崩しています。私への攻撃も中断しました。
私は見ていました。
飛んできたブーメランの持ち手に、ウ○コがついていたのを。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン…………パシッ!
私はブーメランをキャッチした人物を見ます。
そこにいたのは、ブーメランをくわえたくそリンでした。
――くそリン!
「ビチビチ、ビチグソーっ!」
私はくそリンとの再会を喜びたい気分でした。
しかしまだ戦闘は終わっていません。巨大蜂は生きています。
巨大蜂は、私には目もくれずくそリンへと飛んでいきました。
攻撃対象を、くそリンへと変更したようです。
【 キラーホーネットの こうげき! 】
【 くそリンは 20のダメージを うけた! 】
くそリンが敵の針攻撃を受けて、倒れました。
私はギョッとしました。
たしか最後に確認したくそリンのHPは、15。
今の攻撃で、くそリンは……。
「ビチグソー!」
しかし、くそリンは起き上がりました!
くそリン、どうして……。
【 くそリン HP 2/22 】
最大HPが22……?
そうか! レベルが2に上がってたのか!!
それでも依然、くそリンがピンチであることに変わりはありません。
しかしくそリンは、果敢に敵を攻撃していきました。
【 くそリンの こうげき! 】
【 キラーホーネットに 22のダメージ! 】
【 キラーホーネットの こうげき! 】
【 ミス! くそリンに こうげきできない! 】
【 くそリンの こうげき! 】
【 キラーホーネットに 25のダメージ! 】
【 キラーホーネットの こうげき! 】
【 ミス! くそリンに こうげきできない! 】
【 くそリンの こうげき! 】
【 キラーホーネットに 28のダメージ! 】
【 キラーホーネットの こうげき! 】
【 ミス! くそリンに こうげきできない! 】
【 くそリンの こうげき! 】
【 キラーホーネットに 31のダメージ! 】
【 キラーホーネットを やっつけた! 】
【 くそリンは けいけんち 50をかくとく! 】
…………やった。
やりましたよおおおおおおおっ!!
それにしても、なぜ敵の攻撃はくそリンに当たらなかったのでしょうか。
【 くそリンは スキル:かぐわしい香り を覚えた! 】
【 かぐわしい香り:戦闘スキル 】
【 相手の嗅覚を刺激して、集中力を低下させる。名称にはかぐわしいとあるが、特によい香りである必要はない。相手の攻撃を9割以上無効化する。】
なるほど、すごいスキルですね。
敵の攻撃が当たらないだなんて、無敵じゃないですか!
――くそリン。
戦闘も終わり、私はくそリンに声をかけます。
――くそリン、私のことを守ってくれてありがとうございます。
「ビチ、ビチビチビチ……」
――どうして魔の森に戻ってきたのか、ですか? それはもちろん、くそリンを探しに来たからですよ。くそリンこそ、どうして逃げたりしたんですか?
「ビッチ、ビチビチ! グソ?」
――自分がいなければ、私が街に入れるから? ……確かにそうかもしれません。でも私は、たとえ街に入れなくても、くそリンと一緒にいたい。だからこうして、追いかけてきてしまいました。
「ビチビチ……?」
――それでいいのか、ですって?
私は答えを言うかわりに、自分の肩をぽんぽんと叩きました。
――さあくそリン、どうぞ。
「…………ビチーっ!!」
一瞬、くそリンは驚いた様子を見せると、すぐにぴょんぴょん跳びはねて、私の肩に乗ってきました。まるでそこが定位置だったかのように、くそリンは私の肩の上ににピッタリとおさまります。
「ビチビッチー」
くそリンもすごく嬉しそうでした。
私はそんなくそリンの頭を、撫でてみました。
くそリンは私の手にすり寄って、くすぐったそうにしています。
私もとても嬉しかったです。
しかし同時に――
私はこの手の感触に、一抹の不安を覚えていました。
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