第11話 ウ○コ生活100%
異世界のトイレから――
今日も、魔の森でウ○コと野宿をします。
♪チャラッチャッチャッチャチャーララー
――――――――――――――――
提 供
カ ク ヨ ム
――――――――――――――――
♪チャーラー ラー
「ビチビチ、ビチグソー!」
何でしょうか、くそリンが私の腰付近を見ています。
私のベルトには、道中で拾った武器がはさんでありました。
やいばのブーメランです。
私がこの世界に来て初めて手に入れた武器で、見つけたときはそれはもう嬉しかったのですが……実はこれ、私には装備できないんです。それを知ったときには本当にガッカリしましたよ。
仕方がないので、あとで店に売ろうと思っていたのですが……。
――もしかして、これを装備したいのですか?
「ビッチビッチ!!(こくこく)」
くそリンが嬉しそうに跳びはねています。
私はやいばのブーメランをくそリンに渡しました。
【 くそリンは やいばのブーメランを そうびした! 】
【 こうげきりょくが 8から 30に あがった! 】
BGM ♬恋のブーメラン
くそリンは器用にブーメランを口にくわえています。
なかなか様になっていますね。
ちなみに私の攻撃力は10。私の3倍も強いです。
私、自分のウ○コより弱いんですか……。
くそリンは体をひねって勢いよくブーメランを投げました。
ひゅんひゅんひゅんひゅん!!
上空を飛んでいる鳥型モンスターに向かって、ブーメランは真っ直ぐ飛んでいきます。
【 くそリンの こうげき! 】
【 ビートバードに 30のダメージ! 】
【 ビートバードを やっつけた! 】
【 くそリンは 10の けいけんちを かくとく! 】
ちゃらららっちゃっちゃっちゃー♪
【 くそリンは レベルが あがった! 】
やりますね、このウ○コ!!
自分のウ○コだけあって、私も鼻が高いです。
ひゅんひゅんひゅんひゅん――ぱしっ!!
くそリンは、戻ってきたブーメランを口でキャッチしました。
いやー、本当に器用なものですね。
「ビチビチビチッ!」
くそリンがブーメランを私に返してきます。
そのブーメランはというと……すごく、ウ○コまみれでした。
――返さなくていいですよ。それはくそリンが使ってください。
「ビチグソー!!(わーい)」
このブーメラン、もう売れないでしょうしね……。
そのうちに日が暮れてきたので、私は休むのにちょうどいいスペースを見つけると、たき火をつけて食事をすることにしました。
食事のメニューは、この世界の保存食でもあるほしにくです。
固くて食べにくいですが、何度もかんでいると味が出てきて美味しくなります。
もう何日もほしにくばかりですが、これもトイレレポートのため。
それにこういうのも異世界っぽくて、いいですよね。
「ビチビチ、ビチグソー!!」
くそリンが、私の手元を見て跳びはねています。
――もしかして、これを食べたいのですか?
「ビチビチビーッチ!!(こくこく)」
え……っ?
ウ○コなのに、ごはん食べるんですか?
ウ○コって、ごはんのなれの果てなんですよ?
それでもものは試しと、私はほしにくをくそリンにあげました。
「ビチーッ!(もにゅもにゅ)」
くそリンは嬉しそうに、ほしにくをほおばります。
とてもほほえましい光景に、私は思わずほほが緩んでいました。
翌朝は、気持ちのいい快晴でした。
くそリンと一緒に旅立つと、すぐに魔の森を抜けられました。
空気中の瘴気がなくなります。くそリンがその身を保てるのかが心配でしたが、そこはだいじょうぶでした。一度魔物化してしまえば、もう瘴気は必要ないようです。
私たちはそのまま道を歩き、街に到着しました。
多くの冒険者が拠点としている、大きな街です。
ぐるりと外壁に囲まれていて、入口の門には門番が立っています。
通過するにはパスが必要なのですが、私はきちんと所持していました。
「そこの冒険者、パスを見せろ」
――はい、これですね。
「よし通れ。……むむっ、それにしてもお前臭いな」
門番が鼻をつまんでいます。
私にもくそリンの臭いが移っているのでしょう。
私自身は慣れてしまったせいで、もうあまり感じなくなっているのですが。
とにかく、さっさと通ってしまいましょう。
――くそリン、行きますよ。
物珍しそうに門番をながめていたくそリンを急がせます。
ところがそのとき、門番に呼び止められてしまいました。
「おいお前、ちょっと待て。そいつは何だ!?」
――外で手なずけたモンスターですが、それが何か?
手なずけたあとのモンスターは、街に入れても構わない決まりになっています。それなのに、どうして呼び止められたのでしょうか。
「そいつはウ○コだろうが! パスを持っていようが街に入れるわけにはいかないな。モンスターはOKでも、ウ○コを路上に放置することは法律で禁止されている!! ウ○コが路上を歩いてたら、臭くてパニックになるに決まっているだろうが!!」
――くそリンはただのウ○コではありません! 武器を装備できるし、食事もします! 立派な魔物です!
「それでもダメだ、そいつは臭すぎる!! 汚物は消毒だ!!」
でも……。
私が再度反論しようとしたときでした。
「ビチグソー!!」
くそリンが魔の森にむかって、一目散に逃げていってしまいます。
――くそリン!!
「ウ○コがいなくなったなら、街に入ってもいいぞ」
門番が、私を街へと通します。
これでやっと街に入れます。野宿をする必要はなくなりますし、ほしにくオンリーの食事ともおさらばです。あったかいベッドで眠ることもできます。
でも、それでも……。
気がつくと私は、魔の森へと走り出していました。
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